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2017年1月 8日 (日)

中原中也が「四季」に寄せた詩・追補/立原道造との交感「或る不思議なよろこびに」

 

中原中也の第1詩集「山羊の歌」の「みちこ」の章に収められた「無題」は

冒頭に「みちこ」、次に「汚れっちまった悲しみに……」に続く

3番目に配置されています。

 

「みちこ」も「汚れっちまった悲しみに……」も「無題」も

初出は「白痴群」でしたが

「無題」は初出時、

「詩友に」というタイトルのソネットでした。

 

「白痴群」第6号に再発表したときに

タイトルは「無題」と変更され

同時に、5節構成の長詩に作り変えられて

「詩友に」は第3節に組み込まれました。
 
この「無題」が
「山羊の歌」に収録されました。

 

 

立原道造は中原中也の詩を

「四季」誌上で読めましたから

「四季」に発表された「みちこ」や「帰郷」や「逝く夏の歌」や「少年時」などを

いつでも読むことができましたが

「無題」は「四季」に発表されていません。

 

「山羊の歌」で読んだのか

「白痴群」で読んだのか

そのいずれかを、例えば、師である堀辰雄とか

室生犀星とかの所蔵本を借りて読んだのか

色々なことが考えられますが

「無題」の一節を

自作詩「或る不思議なよろこびに」のエピグラフに引用したのです。

 

1936年(昭和11年)6月号「四季」に発表したとき

それは、次のようなかたちでした。

 

 

或る不思議なよろこびに

 

       戸の外の、寒い朝らしい気配を感じながら

            私はおまへのやさしさを思ひ……

                      ――中原中也の詩から

 

灼けた瞳が 灼けてゐた

青い眸でも 茶色の瞳でも

なかつた きらきらしては

僕の心を つきさした。

 

泣かさうとでもいふやうに

しかし 泣かしはしなかつた

きらきら 僕を撫でてゐた

甘つたれた僕の心を嘗めてゐた。

  

灼けた瞳は 動かなかつた

青い眸でも 茶色の瞳でも

あるかのやうに いつまでも
 

灼けた瞳が 叫んでゐた!

太陽や海藻のことなど忘れてしまひ

僕の心に穴あけて 灼けた瞳が 燻ってゐた

 

(筑摩書房「立原道造全集1」中の「失はれた夜に」解題を参照して再現しました。編者。)

 

 

初出の「四季」では

このように「或る不思議なよろこびに」というタイトルであり

中原中也の「無題」の一部をエピグラフにしていたものが

詩集「暁(あかつき)と夕(ゆうべ)の詩」(1937年12月刊)収録にあたっては

「Ⅳ 失はれた夜に」と題名を変更され

エピグラフも削除されました。

 

さらに、最終連は、

 

灼けた瞳は しづかであつた!

太陽や香のいい草のことなど忘れてしまひ

ただかなしげに きらきら きらきら 灼けてゐた

――と変えられました。

 

 

この詩が、「四季」1936年6月号に発表されたころ

二人の詩人は同人会で顔を合わせています。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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