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« 中原中也が「四季」に寄せた詩/「むなしさ」のわれ | トップページ | 中原中也が「四季」に寄せた詩/「帰郷」に吹く風 »

2017年1月 1日 (日)

中原中也が「四季」に寄せた詩/横浜もの「秋の一日」

 

中原中也が「四季」に発表した詩は

およそ30近くあります。

 

すべてが初出ではありませんが

「山羊の歌」にも収めていますから

長い付き合いであったことは確実です。

 

「むなしさ」と同じく「秋の一日」は

横浜を舞台にしていて

横浜ものと呼ばれる詩の一つです。

 

 

秋の一日

 

こんな朝、遅く目覚める人達は

戸にあたる風と轍(わだち)との音によって、

サイレンの棲む海に溺れる。 

 

夏の夜の露店の会話と、

建築家の良心はもうない。

あらゆるものは古代歴史と

花崗岩(かこうがん)のかなたの地平の目の色。

 

今朝はすべてが領事館旗(りょうじかんき)のもとに従順で、

私は錫(しゃく)と広場と天鼓(てんこ)のほかのなんにも知らない。

軟体動物のしゃがれ声にも気をとめないで、

紫の蹲(しゃが)んだ影して公園で、乳児は口に砂を入れる。

 

    (水色のプラットホームと

     躁(はしゃ)ぐ少女と嘲笑(あざわら)うヤンキイは

     いやだ いやだ!)

 

ぽけっとに手を突込んで

路次(ろじ)を抜け、波止場(はとば)に出(い)でて

今日の日の魂に合う

布切屑(きれくず)をでも探して来よう。

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)

 

 

最終連、

ぽけっとに手を突込んで

路次(ろじ)を抜け、波止場(はとば)に出(い)でて

――は

ベルレーヌやランボーの姿を彷彿(ほうふつ)とさせますが

この詩にみなぎる気だるさは

中也独特のもの。

 

この頃の気だるさのなかには

若々しさが漂います。

 

 

中途ですが

今回はここまで。

 

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