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« 中原中也が「四季」に寄せた詩/「帰郷」に吹く風 | トップページ | 中原中也が「四季」に寄せた詩/「少年時」の少年 »

2017年1月 3日 (火)

中原中也が「四季」に寄せた詩/「逝く夏の歌」の戦争

「四季」に初めて寄せた詩の一つが

「逝く夏の歌」です。


「帰郷」とともに「逝く夏の歌」は

「山羊の歌」の「初期詩篇」に収録されています。


「帰郷」「逝く夏の歌」「少年時」は

「山羊の歌」に収録されていますが

「四季」に発表したときに

「山羊の歌」は出版されていません。


「四季」への発表の方が

先になりました。



逝く夏の歌


並木の梢(こずえ)が深く息を吸って、

空は高く高く、それを見ていた。

日の照る砂地に落ちていた硝子(ガラス)を、

歩み来た旅人は周章(あわ)てて見付けた。


山の端(は)は、澄(す)んで澄んで、

金魚や娘の口の中を清くする。

飛んで来るあの飛行機には、

昨日私が昆虫の涙を塗っておいた。


風はリボンを空に送り、

私は嘗(かつ)て陥落(かんらく)した海のことを 

その浪(なみ)のことを語ろうと思う。


騎兵聯隊(きへいれんたい)や上肢(じょうし)の運動や、

下級官吏(かきゅうかんり)の赤靴(あかぐつ)のことや、

山沿(やまぞ)いの道を乗手(のりて)もなく行く

自転車のことを語ろうと思う。


(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)



「山羊の歌」の「初期詩篇」には

意外に知られていないことですが

「戦争」がよく現われます。


この詩は

陥落した海とあることから

日露戦争の旅順陥落を想像できますが。


2番詩「月」に、胸に残った戦車の地音

3番詩「サーカス」に、茶色い戦争ありました

5番詩「朝の歌」に、鄙(ひな)びたる 軍楽の憶い

――などとあるのも

戦争にほかなりません。



冒頭詩「春の日の夕暮」の

馬嘶くか――嘶きもしまい

――の馬も、


4番詩「春の夜」の

夢の裡(うち)なる隊商のその足竝(あしなみ)もほのみゆれ

――の隊商も、


6番詩「臨終」の

黒馬の瞳の光

――の黒馬も

戦争の馬かもしれません。



途中ですが

今回はここまで。

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