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2017年1月27日 (金)

中原中也が「四季」に寄せた詩・番外編/「湖上」/三好達治の否定と肯定・その2

 

 

詩集「在りし日の歌」の紹介をかねて

中原中也の詩風についての私見を述べる

――という意図で書かれた「詩集『在りし日の歌』」(文学界1938年9月号)で

三好達治が2番目に読むのは「湖上」です。

 

 

湖 上

 

ポッカリ月が出ましたら、

舟を浮べて出掛けましょう。

波はヒタヒタ打つでしょう、

風も少しはあるでしょう。

 

沖に出たらば暗いでしょう、

櫂(かい)から滴垂(したた)る水の音(ね)は

昵懇(ちか)しいものに聞こえましょう、

――あなたの言葉の杜切(とぎ)れ間を。

 

月は聴き耳立てるでしょう、

すこしは降りても来るでしょう、

われら接唇(くちづけ)する時に

月は頭上にあるでしょう。

 

あなたはなおも、語るでしょう、

よしないことや拗言(すねごと)や、

洩(も)らさず私は聴くでしょう、

――けれど漕(こ)ぐ手はやめないで。

 

ポッカリ月が出ましたら、

舟を浮べて出掛けましょう、

波はヒタヒタ打つでしょう、

風も少しはあるでしょう。

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)

 

 

この「湖上」については

わずかな感想をしか記しません。

 

それも、肯定の評価です。

 

評価というより

好きだ、と言っているだけのようです。

 

三好の言葉をそのまま引いておきます。

 

 

処々に稚拙なくだりは見つかるにしても、私はこのやうな作品を、彼の作品中でも特に愛誦するものである。

 

 

ここでは

稚拙な詩句(くだり)はあるにしても

口ずさんでみて楽しい、というほどの気持ちを述べて

作品論には踏み込みません。

 

安心して読んでいられる範囲である、というような

ニュアンスが感じられますが

愛誦されるというのは

詩にとって最高の賛辞であるとも言えますし
ここにイロニーは含まれていないのかもしれません。

 

 

途中ですが 

今回はここまで。

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