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2017年1月 5日 (木)

中原中也が「四季」に寄せた詩/「みちこ」の衝撃

1935年(昭和9年)10月15日付けで発行された第2次「四季」創刊号に
「みちこ」は発表されています。

「白痴群」第5号(1930年)にすでに発表したものの
再発表でした。



みちこ

そなたの胸は海のよう
おおらかにこそうちあぐる。
はるかなる空、あおき浪、
涼しかぜさえ吹きそいて
松の梢(こずえ)をわたりつつ
磯白々(しらじら)とつづきけり。

またなが目にはかの空の
いやはてまでもうつしいて
竝(なら)びくるなみ、渚なみ、
いとすみやかにうつろいぬ。
みるとしもなく、ま帆片帆(ほかたほ)
沖ゆく舟にみとれたる。

またその顙(ぬか)のうつくしさ
ふと物音におどろきて
午睡(ごすい)の夢をさまされし
牡牛(おうし)のごとも、あどけなく
かろやかにまたしとやかに
もたげられ、さてうち俯(ふ)しぬ。

しどけなき、なれが頸(うなじ)は虹にして
ちからなき、嬰児(みどりご)ごとき腕(かいな)して
絃(いと)うたあわせはやきふし、なれの踊れば、
海原(うなばら)はなみだぐましき金にして夕陽をたたえ
沖つ瀬は、いよとおく、かしこしずかにうるおえる
空になん、汝(な)の息絶(た)ゆるとわれはながめぬ。

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)



「みちこ」も
「山羊の歌」第3章にあたる章「みちこ」の
冒頭詩として配置されているのは
「少年時」と同じような位置づけです。

「四季」のイメージに
ランボー(の苛烈な青春)を打ち込み
女性の肉体を賛美したような「みちこ」を打ち込んで
反応(衝撃)はどのようなものだったのでしょうか。



季刊から月刊となった第2次「四季」は
堀辰雄、三好達治、丸山薫、津村信夫、立原道造の編集中枢5人に加え
あらたな編集同人に、井伏鱒二、萩原朔太郎、竹中郁、田中克己、辻野久憲、中原中也、
桑原武夫、神西清、神保光太郎の9人を迎えました。

第2次「四季」は敗戦の前年1944年に81号で終刊しますが
その間に、室生犀星、阪本越郎、大山定一、河盛好蔵、田中冬二、杉山平一、大木実、
高森文夫、呉茂一、山岸外史、保田與重郎、芳賀檀、伊東静雄、蔵原伸二郎らが同人と
して執筆、
同人以外からの寄稿もありました。



途中ですが
今回はここまで。

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