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« 中原中也が「四季」に寄せた詩/「逝く夏の歌」の戦争 | トップページ | 中原中也が「四季」に寄せた詩/「少年時」とランボーの影 »

2017年1月 3日 (火)

中原中也が「四季」に寄せた詩/「少年時」の少年

 

「少年時」は

第1詩集の出版を計画した当初

詩集タイトルの一つとされていたほどに

中原中也のなかで価値の高いネーミング(言葉)でした。

 

それは

1、ランボーの翻訳(鈴木信太郎)の筆写稿の「少年時」

2、詩篇の清書用のノート「ノート少年時」

3、未発表詩篇「少年時」(母は父を送り出すと)

4、本篇「少年時」

――と使われていることからも見て取れます。

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰ解題篇。)

 

 

この「少年時」が

詩集「山羊の歌」で

「初期詩篇」に次ぐ第2章の題に採用されましたから

五つ目の使用になります。

 

 

少年時

 

黝(あおぐろ)い石に夏の日が照りつけ、

庭の地面が、朱色に睡(ねむ)っていた。

 

地平の果(はて)に蒸気が立って、

世の亡ぶ、兆(きざし)のようだった。

 

麦田(むぎた)には風が低く打ち、

おぼろで、灰色だった。

  

翔(と)びゆく雲の落とす影のように、

田の面(も)を過ぎる、昔の巨人の姿――

 

夏の日の午過(ひるす)ぎ時刻

誰彼(だれかれ)の午睡(ひるね)するとき、

私は野原を走って行った……

 

私は希望を唇に噛みつぶして

私はギロギロする目で諦(あきら)めていた……

噫(ああ)、生きていた、私は生きていた!

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)

 

 

自身の少年時代を

ランボーの詩の中に見つけた驚きが

興奮がちにこの詩に刻まれている、と思えるほどです。

 

詩内容はランボーの「少年時」の強い影響下にありますが

しかし、この詩の少年は

まぎれもなく中也少年です。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

 

 

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