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2017年2月10日 (金)

立原道造の詩を読む/「ある不思議なよろこびに」/続「灼けた瞳」は誰の瞳か?

 

 

 

「ある不思議なよろこびに」は

 

立原道造と中原中也という二人の詩人の魂の交感を

 

立原道造の側から歌った詩と読めることになりますが

 

その詩はどこに存在するでしょうか? と問えば

 

「四季」1936年6月号誌上にある、というしかありません。

 

 

 

角川文庫の「立原道造詩集」にも

 

岩波文庫の「立原道造詩集」にも

 

角川書店「立原道造全集」にも

 

筑摩書房「立原道造全集」にも

 

「ある不思議なよろこびに」は1個の独立した詩として

 

紹介されることはありません。

 

 

 

目次に表記されることもなく

 

注釈の中で

 

そのような元詩(第1次形態)が存在したことが

 

明かされるだけです。

 

 

 

 

 

 

「立原道造全集」の解題によって

 

「ある不思議なよろこびに」を再現しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

ある不思議なよろこびに

 

 

 

      戸の外の、寒い朝らしい気配を感じながら

 

      私はおまへのやさしさを思ひ……

 

                  ――中原中也の詩から

 

 

 

灼(や)けた瞳が 灼けてゐた

 

青い眸(ひとみ)でも 茶色の瞳でも

 

なかつた きらきらしては

 

僕の心を つきさした。

 

 

 

泣かさうとでもいふやうに

 

しかし 泣かしはしなかつた

 

きらきら 僕を撫(な)でてゐた

 

甘つたれた僕の心を嘗(な)めていた。

 

 

 

灼けた瞳は 動かなかつた

 

青い眸でも 茶色の瞳でも

 

あるかのやうに いつまでも

 

 

 

灼けた瞳が 叫んでゐた!

 

太陽や海藻のことなど忘れてしまひ

 

僕の心に穴あけて 灼けた瞳が 燻ってゐた

 

 

 

 

 

 

【現代表記】

 

 

 

ある不思議なよろこびに

 

 

 

      戸の外の、寒い朝らしい気配を感じながら

 

      私はおまえのやさしさを思い……

 

                  ――中原中也の詩から

 

 

 

灼(や)けた瞳が 灼けていた

 

青い眸(ひとみ)でも 茶色の瞳でも

 

なかった きらきらしては

 

僕の心を つきさした。

 

 

 

泣かそうとでもいうように

 

しかし 泣かしはしなかった

 

きらきら 僕を撫(な)でていた

 

甘ったれた僕の心を嘗(な)めていた。

 

 

 

灼けた瞳は 動かなかった

 

青い眸でも 茶色の瞳でも

 

あるかのように いつまでも

 

 

 

灼けた瞳が 叫んでいた!

 

太陽や海藻のことなど忘れてしまい

 

僕の心に穴あけて 灼けた瞳が 燻っていた

 

 

 

 

 

 

句点を削除したほかに

 

第4連第1行

 

灼けた瞳が叫んでゐた!→灼けた瞳はしづかであつた!

 

 

 

第4連第2行

 

太陽や香のいい草のことなど→太陽や海藻のことなど

 

 

 

第4連第3行

 

僕の心に穴あけて 灼けた瞳が 燻ってゐた→ただかなしげに きらきら きらきら 灼けてゐた

 

 

 

――と、いずれも最終連に変更がほどこされました。

 

 

 

 

 

 

灼けた瞳が

 

中原中也のものであることが

 

ますます伝わってきますが

 

当たり前のことながらそれは

 

「ある不思議なよろこびに」という詩の中でのことであります。

 

 

 

「失われた夜に」という詩の中ででのことではありません。

 

 

 

詩集「暁と夕の詩」で「失われた夜に」にふれる時

 

灼けた瞳を女性のものと読むことは

 

自然の成り行きになります。

 

 

 

あ、これは、失恋の詩だ、と。

 

 

 

 

 

 

失われた恋の追憶と読むことを

 

限定しているというところで

 

「失われた夜に」は

 

「暁と夕の詩」の中に存在しているようです。

 

 

 

立原道造は

 

「暁と夕の詩」をそのように仕立てたのかどうか、

 

それは検討の余地を残しますが。

 

 

 

失われたものが

 

女性に限ったことではないということになれば

 

「暁と夕の詩」にアクセスする入口は広がりはじめます。

 

 

 

 

 

 

この項終わり。

 

 

 

 

 

 

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