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2017年2月13日 (月)

立原道造の詩を読む/「暁と夕の詩」の夜の歌「眠りのほとりに」

 

 

 

 

 

 

7番詩「溢れひたす闇に」を物語「鮎の歌」の結びの詩として配置したのは

 

鮎との別れが決定的になり完結(完成)し

 

その直後から夜の闇(絶望)が詩人をひた寄せたことを告げるためのもののようでした。

 

 

 

詩集「暁と夕の詩」は

 

8番詩「眠りのほとりに」

 

9番詩「さまよひ」と

 

夜の歌をよりいっそう悲痛に歌い

 

最終詩「朝やけ」でようやく暁を迎えます。

 

 

 

そのような配列で

 

時間軸に沿うかのような構成を示し

 

暗黒の夜からの脱出を歌うかのようです。

 

 

 

夜の歌を少し聴いてみましょう。

 

 

 

 

 

 

Ⅷ 眠りのほとりに

 

 

 

沈黙は 青い雲のやうに

 

やさしく 私を襲ひ……

 

私は 射とめられた小さい野獣のやうに

 

眠りのなかに 身をたふす やがて身動きもなしに

 

 

 

ふたたび ささやく 失はれたしらべが

 

春の浮雲と 小鳥と 花と 影とを 呼びかへす

 

しかし それらはすでに私のものではない

 

あの日 手をたれて歩いたひとりぼつちの私の姿さへ

 

 

 

私は 夜に あかりをともし きらきらした眠るまへの

 

そのあかりのそばで それらを溶かすのみであらう

 

夢のうちに 夢よりもたよりなく――

 

 

 

影に住み そして時間が私になくなるとき

 

追憶はふたたび 嘆息のやうに 沈黙よりもかすかな

 

言葉たちをうたはせるであらう

 

 

 

(岩波文庫「立原道造詩集」より。)

 

 

 

 

 

 

【現代表記】

 

 

 

Ⅷ 眠りのほとりに

 

 

 

沈黙は 青い雲のように

 

やさしく 私を襲い……

 

私は 射とめられた小さい野獣のように

 

眠りのなかに 身をたおす やがて身動きもなしに

 

 

 

ふたたび ささやく 失われたしらべが

 

春の浮雲と 小鳥と 花と 影とを 呼びかえす

 

しかし それらはすでに私のものではない

 

あの日 手をたれて歩いたひとりぼっちの私の姿さえ

 

 

 

私は 夜に あかりをともし きらきらした眠るまえの

 

そのあかりのそばで それらを溶かすのみであろう

 

夢のうちに 夢よりもたよりなく――

 

 

 

影に住み そして時間が私になくなるとき

 

追憶はふたたび 嘆息のように 沈黙よりもかすかな

 

言葉たちをうたわせるであろう

 

 

 

 

 

 

射止められた小さな野獣が眠りに落ちようとしている――。

 

 

 

そこに現われる

 

春の浮雲と 小鳥と 花と 影と。

 

 

 

鮎(と特定してよいものでしょうか)と過ごした

 

高原の草地の情景。

 

 

 

漆黒の闇のなかに

 

音のない言葉が聞こえてきます。

 

 

 

 

 

 

つづく。

 

 

 

 

 

 

 

 

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