カテゴリー

2024年1月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« 立原道造の詩を読む/第2詩集「暁と夕の詩」から「失はれた夜に」続 | トップページ | 立原道造の詩を読む/「ある不思議なよろこびに」/続「灼けた瞳」は誰の瞳か? »

2017年2月 9日 (木)

立原道造の詩を読む/「ある不思議なよろこびに」/「灼けた瞳」は誰の瞳か?

 

 

「失はれた夜に」は詩集「暁と夕の詩」に収録された時に

 

「ある不思議なよろこびに」のタイトルが変更され

 

題詞(エピグラフ)も同時に削除されました。

 

 

 

この変更によって

 

この詩に何が起こったでしょうか。

 

 

 

「ある不思議なよろこびに」を

 

読んでみましょう、

 

「失はれた夜に」ではない詩を。

 

 

 

 

 

 

ある不思議なよろこびに

 

 

 

      戸の外の、寒い朝らしい気配を感じながら

 

      私はおまへのやさしさを思ひ……

 

                  ――中原中也の詩から

 

 

 

灼(や)けた瞳が 灼けてゐた

 

青い眸(ひとみ)でも 茶色の瞳でも

 

なかつた きらきらしては

 

僕の心を つきさした

 

 

 

泣かさうとでもいふやうに

 

しかし 泣かしはしなかつた

 

きらきら 僕を撫(な)でてゐた

 

甘つたれた僕の心を嘗(な)めていた

 

 

 

灼けた瞳は 動かなかつた

 

青い眸でも 茶色の瞳でも

 

あるかのやうに いつまでも

 

 

 

灼けた瞳は しづかであつた!

 

太陽や香のいい草のことなど忘れてしまひ

 

ただかなしげに きらきら きらきら 灼けてゐた

 

 

 

 

 

 

【現代表記】

 

 

 

ある不思議なよろこびに

 

 

 

      戸の外の、寒い朝らしい気配を感じながら

 

      私はおまえのやさしさを思い……

 

                  ――中原中也の詩から

 

 

 

灼(や)けた瞳が 灼けていた

 

青い眸(ひとみ)でも 茶色の瞳でも

 

なかった きらきらしては

 

僕の心を つきさした

 

 

 

泣かそうとでもいうように

 

しかし 泣かしはしなかった

 

きらきら 僕を撫(な)でていた

 

甘ったれた僕の心を嘗(な)めていた

 

 

 

灼けた瞳は 動かなかった

 

青い眸でも 茶色の瞳でも

 

あるかのように いつまでも

 

 

 

灼けた瞳は しずかであった!

 

太陽や香のいい草のことなど忘れてしまい

 

ただかなしげに きらきら きらきら 灼けていた

 

 

 

 

 

 

この変化の重大な意味を

 

はじめはなかなか理解できません。

 

 

 

中原中也からの引用が消えたね

 

――程度のことをしか

 

はじめは理解しないはずですが。

 

 

 

詩集「暁と夕の詩」には

 

「ある不思議なよろこびに」はふさわしくなかったことに

 

やがて気づくことになるでしょう。

 

 

 

 

 

 

「ある不思議なよろこびに」をそのまま載せていては

 

「暁と夕の詩」のコンセプトにそぐわなかったのです。

 

 

 

コンセプトを言いかえれば

 

物語と呼んでよいかもしれません。

 

 

 

立原道造が

 

風信子(ヒヤシンス)叢書の第2冊として「暁と夕の詩」を編む過程で

 

「ある不思議なよろこびに」のタイトルとエピグラフは

 

他の詩など全体の構成に融和していないと考えたのでしょう。

 

 

 

 

 

 

第1に

 

詩集「暁と夕の詩」は

 

女性との恋の記憶と別離の物語でなければならなかった、から。

 

 

 

第2に

 

本文をそのまま生かしたのは

 

「灼けた瞳」が女性であることを妨げるものではなかった、から。

 

 

 

このほかにも理由はあることでしょう。

 

 

 

 

 

 

「失はれた夜に」の元の形を知っていると

 

「灼けた瞳」の瞳に

 

中原中也の、あのキラキラした瞳がかぶさってきますが

 

そのように読んでもOKOK

 

立原道造は思ったことでしょう。

 

 

 

 

 

 

つづく。

 

 

 

 

 

 

 

 

« 立原道造の詩を読む/第2詩集「暁と夕の詩」から「失はれた夜に」続 | トップページ | 立原道造の詩を読む/「ある不思議なよろこびに」/続「灼けた瞳」は誰の瞳か? »

058中原中也の同時代/立原道造の詩を読む」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 立原道造の詩を読む/第2詩集「暁と夕の詩」から「失はれた夜に」続 | トップページ | 立原道造の詩を読む/「ある不思議なよろこびに」/続「灼けた瞳」は誰の瞳か? »