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2017年2月24日 (金)

新川和江・抒情の源流/「睡り椅子」の世界/「雪の蝶」

 

「睡り椅子」は

1953年プレイアド社刊。

 

結婚して上京し

5年が経っていた頃に出した

新川和江、最初の詩集でした。

 

1953年は昭和28年であり

詩人24歳になる年のことでしたから

西條八十を初めて訪ねた1944年1月から

9年という月日が流れています。

 

中に「雪の蝶」はあります。

 

 

雪の蝶

 

約束の場所へは

たうとう出かけなかった

冬の終りの日に

まつたく思ひまうけぬ朝からの雪だつた

こころ落ち着かぬわたしの部屋の窓に

ときをり

小さな蛾の様に音もなく来てとまる雪

いまごろはあの街角で

わたしを待ちわび またもや覗く腕時計の

うすいガラスのうへにも

ふと とまつたにちがひない 雪の蝶

 

「三年目

 このめぐりあひに甘えてはならないのです

 コートの肩のつめたいものをはらつて

  おねがひ お帰り下さい

  逢つてはいけない二人でした」

 

くもり硝子の窓をあけ

とまつた小さな蛾をはらへば

たまゆらにとけてあたたかな指先をぬらすのみであつた

見れば

庭石をおほい 樹木をつつみ

屋根に 垣根に 水仙の黄に

わたしをひとり塗りのこして

しんしんと万象(ものみな)に降りつむ

純白の雪 雪 雪

 

(花神社「新川和江全詩集」所収「睡り椅子」より。原詩のルビは( )で示しました。編者。)

 

 

詩集「睡り椅子」は

雪の蝶

都会の靴

昨日の時計

――の3章で構成されていて

その第1章のタイトル詩です。

 

第1詩集の第1章のタイトルになった詩ですから

「睡り椅子」の世界への入り口のような詩でありそうな――。

 

 

抒情の源流を求めて

ちいさな旅をまたはじめます。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

 

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