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2017年3月 6日 (月)

新川和江・抒情の源流/「睡り椅子」の世界/「冬の金魚」その2

 

冬の金魚は

詩人の成り代わりでもあるわけですが

成り代わってどうしたのか。

 

そこにこの詩「冬の金魚」の

ねらい(眼目)はありますが

詩人はその種明かしをエッセイ「張りつめたこころ」で見せてくれます。

 

それが第3連終行の

つめたく燃ゆる銀嶺の雪

――です。

 

 

冬の金魚

 

   ひらひら ひらひら

 

夏のさかりを生きのびて

金魚は夜もねむらない

ひたぶるの この水中思考

 

死ぬ日までは生きねばならない

たつたひとりでも生きねばならない

さびしい生活の戒律を

そなたもまた まもるのか

 

いつの日か 水藻のかげに

白き腹見せてとはのねむりにつく時

金魚は夢見るであらう

つひにのぞむを得なかった

つめたく燃ゆる銀嶺の雪を

 

   ひらひら ひらひら

 

きらめく裳裾をひるがへし ひるがへし

冬の金魚の

いのちのかなしさ

 

(花神社「新川和江全集」所収「睡り椅子」より。)

 

 

ひらひら ひらひら

……。

 

眼前に揺れる金魚を見ている詩人は

寂し気で(?)

健気(けなげ)で

悠然として

夢を誘うような

眠りを誘うような

ひらひら ひらひら を見ていて

いつしか

金魚が永久の眠りにつく時を思います。

 

私が見るような夢を

金魚も見るだろうか? と。

 

その夢こそは

つめたく燃ゆる銀嶺の雪

――でした。

 

 

つひにのぞむを得なかった

――と悲観しているようですが

冷たく燃ゆる銀嶺の雪

――ですから

それは至高の

到底、実現不可能な高峰の雪のことですから

のぞみの高さを指しています。

 

望んで実現しなかった

――と言っているのではありません。

 

 

詩人はその<銀嶺の雪>を、

 

夜ごと目覚めて思考しても、ついに書き得ないだろう至高の詩の暗喩

――と明かしています。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

 

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