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2017年3月29日 (水)

新川和江・抒情の源流/「睡り椅子」の世界・番外編/「雲」

 

 

「虐殺史」「都会の靴」を読み終えたところで

少し寄り道をしてみたくなりました。

 

急がば回れで

見えないものも見えてくるかもしれません。

 

 

「睡り椅子」は

新川和江の第1詩集ですから

初期の作品が集められましたが

これに収録できなかった詩篇が相当数残されていることは

小自伝「始発駅まで」やほかのエッセイなどで知ることが出来て

びっくりすることがあります。

 

敗戦直前の1944年(昭和19年)に

近くに疎開してきた詩人、西條八十に手紙を書いたところ

「詩のノートを持っていらっしゃい」との返信を得た時から

師弟の関係がはじまるのですが。

 

この「詩のノート」がどんなものであるか

どれほどのノートが蓄えられていたのか分かりませんが

このノートには

習作も含めて

詩人誕生期の

女学生の素直で熱情的で純真でありながら

早熟の、知的な、あるいは社会的な側面とも言ってもよい

女性の位置を意識した作品が含まれています。

 

「雲」は

そのような作品の一つです。

 

 

 

荒れ気味の夜

窓をあけると

あおぐろい雲が

ついそこまで下りて来て

もがき 逃げ廻り 蛇の様にのたうつてゐた

 

見てゐると

雲はひとつではなかつた

たくさんの雲たちが

あの様に よつて たかつて

すさまじい歌をうたつてゐるのであつた

 

すでに

雲は雲ではなかつた

それは 女の群像であつた

女たちの群像であつた

女たちの苦悩の姿であつた

さうして

嵐の来る前夜の空に

あの様に髪をふりみだし たけり くるひ

苦しんでゐるのであつた

 

いつまでも見てゐると

胸が圧潰されさうなのは そのせゐだ

わたしは重苦しく窓を閉める

 

するとこんどは

はげしい雨が窓玻璃(ガラス)をたたいた

 

 

この詩「雲」は

1975年刊の「現代詩文庫64『新川和江詩集』」に

「初出詩篇」として発表されたものです。

 

第1詩集「睡り椅子」発行の1953年から

20年余が経過していましたが

「睡り椅子」に収録されなかったいくつかの詩篇があり

その中の「16歳のノートより」と題された詩篇の一つです。

 

16歳といえば1945年、敗戦の年です。

 

まだ東京に移住する前に

作られた作品です。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

 

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