今日は詩人、中原中也の生誕110年記念日です。
詩人は1907年(明治40年)の4月29日に、山口県吉敷郡下宇野令村に父・謙助、母・フ
クの長男として生まれました。その日から数えると、今日は110歳になります。詩を一つ読
んで、詩人を偲びます。
28歳の年の制作で、若き日の恋を歌った未発表詩です。
◇
(おまえが花のように)
おまえが花のように
淡鼠(うすねず)の絹の靴下穿(は)いた花のように
松竝木(まつなみき)の開け放たれた道をとおって
日曜の朝陽を受けて、歩んで来るのが、
僕にみえだすと僕は大変、
狂気のようになるのだった
それから僕等磧(かわら)に坐って
話をするのであったっけが
思えば僕は一度だって
素直な態度をしたことはなかった
何時(いつ)でもおまえを小突(こづ)いてみたり
いたずらばっかりするのだったが
今でもあの時僕らが坐った
磧の石は、あのままだろうか
草も今でも生えていようか
誰か、それを知ってるものぞ!
おまえはその後どこに行ったか
おまえは今頃どうしているか
僕は何にも知りはしないぞ
そんなことって、あるでしょうかだ
そんなことってあってもなくても
おまえは今では赤の他人
何処(どこ)で誰に笑っているやら
今も香水つけているやら
(1935・1・11)
(「新編中原中也全集」第2巻より。現代かなに変えました。編者。)
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