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2017年4月29日 (土)

今日は詩人、中原中也の生誕110年記念日です。

詩人は1907年(明治40年)の4月29日に、山口県吉敷郡下宇野令村に父・謙助、母・フ

クの長男として生まれました。その日から数えると、今日は110歳になります。詩を一つ読

んで、詩人を偲びます。

 

28歳の年の制作で、若き日の恋を歌った未発表詩です。

 



 

(おまえが花のように)

 

おまえが花のように

淡鼠(うすねず)の絹の靴下穿(は)いた花のように

松竝木(まつなみき)の開け放たれた道をとおって

日曜の朝陽を受けて、歩んで来るのが、

 

僕にみえだすと僕は大変、

狂気のようになるのだった

それから僕等磧(かわら)に坐って

話をするのであったっけが

 

思えば僕は一度だって

素直な態度をしたことはなかった

何時(いつ)でもおまえを小突(こづ)いてみたり

いたずらばっかりするのだったが

 

今でもあの時僕らが坐った

磧の石は、あのままだろうか

草も今でも生えていようか

誰か、それを知ってるものぞ!

 

おまえはその後どこに行ったか

おまえは今頃どうしているか

僕は何にも知りはしないぞ

そんなことって、あるでしょうかだ

 

そんなことってあってもなくても

おまえは今では赤の他人

何処(どこ)で誰に笑っているやら

今も香水つけているやら

     (1935・1・11)

 

(「新編中原中也全集」第2巻より。現代かなに変えました。編者。)

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