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2017年5月23日 (火)

中原中也生誕110年に寄せて読む詩・その19/「雪の宵」

 

 

恋は終わっても

思い出すといとしくてしかたない――。

 

 

今、目の前にあるのは

ホテルの煙突です。

 

そこに恋人はいません。

 

 

雪の宵

        青いソフトに降る雪は

        過ぎしその手か囁きか  白 秋

 

ホテルの屋根に降る雪は

過ぎしその手か、囁(ささや)きか

  

  ふかふか煙突(えんとつ)煙吐(けむは)いて、

  赤い火の粉(こ)も刎(は)ね上る。

 

今夜み空はまっ暗で、

暗い空から降る雪は……

 

  ほんに別れたあのおんな、

  いまごろどうしているのやら。

 

ほんにわかれたあのおんな、

いまに帰ってくるのやら

 

  徐(しず)かに私は酒のんで

  悔(くい)と悔とに身もそぞろ。

 

しずかにしずかに酒のんで

いとしおもいにそそらるる……

 

  ホテルの屋根に降る雪は

  過ぎしその手か、囁きか

 

ふかふか煙突煙吐いて

赤い火の粉も刎ね上る。

 

(「新編中原中也全集」第1巻より。現代かなに変えました。)

 

 

 

ホテルの煙突が

ふかふかと煙を吐いて

赤い火の粉が跳ねる、という現在形。

 

恋は現在形の中に

思い出されるだけのものです。

 

過去のものです。

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