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2017年5月 2日 (火)

中原中也生誕110年に寄せて読む詩・続続続/「時こそ今は……」

生誕110年の記念すべき日に寄せて

こころに残る詩をひろい読みしているうちに

中也の作った恋の歌ばかりを並べる結果になりました。

 

未発表詩を含めて計380ほどの全詩に

1割ほどはあるでしょうか

5%ほどでしょうか。

 

もっと読みたくなってきたのは

木の芽時(このめどき)の陽気のせいでしょうか。

 

恋の絶唱といってもオーバーではない

名品「時こそ今は……」は

「山羊の歌」中「秋」の章の最終詩です。

 

 

時こそ今は……

 

         時こそ今は花は香炉に打薫じ

                 ボードレール

 

時こそ今は花は香炉(こうろ)に打薫(うちくん)じ、

そこはかとないけはいです。

しおだる花や水の音や、

家路をいそぐ人々や。

 

いかに泰子(やすこ)、いまこそは

しずかに一緒に、おりましょう。

遠くの空を、飛ぶ鳥も

いたいけな情(なさ)け、みちてます。

 

いかに泰子、いまこそは

暮るる籬(まがき)や群青の

空もしずかに流るころ。

 

いかに泰子、いまこそは

おまえの髪毛なよぶころ

花は香炉に打薫じ、

 

(「新編中原中也全集」第1巻より。現代かなに変えました。)

 

 

ファムファタル、長谷川泰子と別れて後

しばしば二人は逢うことがありました。

 

詩人のこころは

幸福の絶頂にあって

静かなひとときが流れていかないように

祈っていました。

 

詩末の「、」は

永遠の時を願う詩人の気持ちを表します。

 

1930年(昭和5年)1、2月の制作です。

 

 

 

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