中原中也生誕110年に寄せて読む詩・その6/「或る女の子」
純真無垢なるものへのいつくしみといっていいのか
詩人のこころが見るのは
妹への兄のような
女の子への父のような、というだけでは捉えられない
そうした心に限りなく近いけれども
似ているだけの恋ごころを歌うようです。
◇
或る女の子
この利己一偏(りこいっぺん)の女の子は、
この小(ち)っちゃ脳味噌は、
少しでもやさしくすれば、
おおよろこびで……
少しでも素気(すげ)なくすれば、
すぐもう逃げる……
そこで私が、「ひどくみえてても
やさしいのだよ」といってやると、
ほんとにひどい時でも
やさしいのだと思っている……
この利己一偏の女の子は、
この小っちゃ脳味噌は、
――この小っちゃな脳味噌のために道の平らかならんことを……
(「新編中原中也全集」第1巻より。現代かなに改めました。)
◇
1929年(昭和4年)か、1930年(昭和5年)かに作られ
「白痴群」第6号(昭和5年4月1日付け発行)に発表された詩です。
22歳か、23歳の制作です。
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