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2017年5月 5日 (金)

中原中也生誕110年に寄せて読む詩・その6/「或る女の子」

 

 

純真無垢なるものへのいつくしみといっていいのか

詩人のこころが見るのは

妹への兄のような

女の子への父のような、というだけでは捉えられない

そうした心に限りなく近いけれども

似ているだけの恋ごころを歌うようです。

 

 

或る女の子

 

この利己一偏(りこいっぺん)の女の子は、

この小(ち)っちゃ脳味噌は、

 

少しでもやさしくすれば、

おおよろこびで……

 

少しでも素気(すげ)なくすれば、

すぐもう逃げる……

 

そこで私が、「ひどくみえてても

やさしいのだよ」といってやると、

 

ほんとにひどい時でも

やさしいのだと思っている……

 

この利己一偏の女の子は、

この小っちゃ脳味噌は、

 

――この小っちゃな脳味噌のために道の平らかならんことを……

 

(「新編中原中也全集」第1巻より。現代かなに改めました。)

 

 

1929年(昭和4年)か、1930年(昭和5年)かに作られ

「白痴群」第6号(昭和5年4月1日付け発行)に発表された詩です。

 

22歳か、23歳の制作です。

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