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2017年6月 4日 (日)

中原中也生誕110年に寄せて読む詩・その27/「雨の日」

雨は

遠い過去につながっているものなのでしょうか?

 

降りしきる雨は

見ているだけで(ということは中にいて濡れていてはいけないのです)

遠い過去へワープする呼び水です。

 

 

雨の日

 

通りに雨は降りしきり、

家々の腰板古(こしいたふる)い。

もろもろの愚弄(ぐろう)の眼(まなこ)は淑(しと)やかとなり、

わたくしは、花弁(かべん)の夢をみながら目を覚ます。

     *

鳶色(とびいろ)の古刀(ことう)の鞘(さや)よ、

舌あまりの幼な友達、

おまえの額(ひたい)は四角張ってた。

わたしはおまえを思い出す。

     *

鑢(やすり)の音よ、だみ声よ、

老い疲れたる胃袋よ、

雨の中にはとおく聞け、

やさしいやさしい唇を。

     *

煉瓦(れんが)の色の憔心(しょうしん)の

見え匿(かく)れする雨の空。

賢(さかし)い少女の黒髪と、

慈父(じふ)の首(こうべ)と懐かしい……

 

(「新編中原中也全集」第1巻より。現代かなに変えました。)

 

 

ワープしたといっても

いま、雨は降り続けていますから

雨の降っている現在の情景が

過去の情景と混ざり合うような

(認識の)カオスが生じるのでしょうか

現在の情景だか

過去の情景だかを見極めがたい景色が出現するかのようです。

 

その状態を 

白日夢と呼んでいいかもしれません。

 

 

第2連に、

舌あまりの幼な友達であり

額の四角張ってた

――と現われるおまえは女性でしょうか。

 

もし女性であるなら

第4連に出てくる賢(さかし)い少女と

同一の女性なのでしょうか。

 

慈父が

厳格であった詩人の父のメタファーである可能性もあり

そうなると

この慈父に対として現れる黒髪の賢しい少女は

詩人の母のメタファーである可能性もあるので

先に登場する幼な友達とは異なる女性かもしれません。

 

 

いずれも断定することはできませんが

第1連の幼な友達の四角張ってた額と

第4連の女性の黒髪と

ともに女性の姿形(すがたかたち)への言及は

恋の原初と思えなくもありません。

 

原初の恋が

母親であっておかしい理由はありませんし。

 

 

「早春の風」に、青い女の顎

「青い瞳」の、青い瞳

「六月の雨」の、眼うるめる、面長き女

――と現われる女たち。

 

この後も

「夏の夜」には、桜色の女が現われます。

 

これら女性たちは

詩人の恋した女たちではなかったでしょうか。

 

恋ではなかったでしょうか。

 

 

遠景に現われ

点景のような女たちは

謎のままです。

 

謎ですが

過去の存在であることは確かです。

 

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