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2017年6月23日 (金)

中原中也生誕110年に寄せて読む詩・その41/「童女」

 

 

これから読む詩「童女」をまた

ここで取り上げてよいものか

まったく見当外れであるかも知れませんが

解釈次第では

可能的な読みの範囲に入るという幅を取って

やはり読むことにしました。

 

 

謎の多い詩です。

 

一つ謎が解ければ

謎の全部も解けていくような作りの詩であるかも知れません。

 

 

童 女

 

眠れよ、眠れ、よい心、

おまえの肌えは、花粉だよ。

 

飛行機虫の夢をみよ、

クリンベルトの夢をみよ。

 

眠れよ、眠れ、よい心、

おまえの眼(まなこ)は、昆虫だ。

 

皮肉ありげな生意気な、

奴等(やつら)の顔のみえぬひま、

 

眠れよ、眠れ、よい心、

飛行機虫の、夢をみよ。

クリンベルトの夢をみよ。

 

(「新編中原中也全集」第1巻より。現代かなに変えました。)

 

 

この詩が

呼びかけている相手は

だれでしょうか?

 

童女であることは間違いありませんが

字義通り、童女なのでしょうか?

 

純粋無垢の幼児を

リアリスティックに想定してよいのでしょうか?

 

 

花粉

昆虫

――という喩(たとえ)がまずはひっかかります。

 

この二つとも

童女の身体の部分(肌と眼)の比喩(述語)ですが

この比喩が指し示す意味は

どんなことでしょうか?

 

そこにさまざまな読みが可能です。

 

肌が花粉

眼が昆虫。

 

 

眠れ、眠れ、よい心

そして

おまえ、と呼びかける相手に

見させたい夢は

飛行機虫の夢

クリンベルトの夢、ですが。

 

クリンベルトが謎であっても

飛行機虫のイメージは

さほど見当外れにならないはずの想像を働かせることはできます。

 

まどろみを誘うような心地よい

生き物(飛行機虫)が見る夢を

よい心、おまえが見るように

この詩は歌っていると読むことができるでしょう。 

 

 

ここまで読んで

童女は童女であり続けます。

 

童女は幼児のままですが

純粋無垢の成熟した女性の影が

ふとどこからともなく射して来るのには

理由が見当たりません。

 

童女は

濁世(じょくせい)に身を置き

純粋無垢を維持することが危ぶまれる存在ですから

どうにかして

その危険から守ってあげたいと思うこころが

詩の作者にあるのでしょう。

 

 

そのこころは

恋心(こいごころ)と無縁ではありません。

 

となるとこの詩は

大人の子守唄、すなわちラブソングではないかとも思えて来て

少し目が覚めます。

 

 

「歴程」の昭和11年(1936年)3月創刊号に

「童女」は発表されました。

 

「倦怠輓歌」全5篇の一つでした。

 

ちなみにこの5篇は

「閑寂」

「お道化うた」

「童女」

「深更」

「白紙(ブランク)」

――というラインアップでした。

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