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2017年9月12日 (火)

新川和江とその周辺/「始発駅」のころ・1953年の詩人たち/秋谷豊⑬ネオ・ロマンチシズム

 

 

秋谷豊が標榜(ひょうぼう)したネオ・ロマンチシズムとは

どのような詩の思想だったのでしょうか?

 

それを知るには

詩を読むのが一番の近道ということになるのでしょう。

 

すでに読んだ詩篇にも

その一端が明らかにされています。

 

第1詩集「遍歴の手紙」から第2詩集「葦の閲歴」に至る詩群には

ロマンチシズム変革の過程を

戦後の制作を集めた第2詩集「葦の閲歴」には

ロマンチシズム変革の成果を見ることができます。

 

「晩春の死 堀辰雄に」や「星ふる夜の高原にて」や

「蝉」や「夏の人」。

 

「葦の閲歴」以外にも

「降誕祭前夜」収録の「漂流」をすでに読みました。

 

第3詩集「登攀」以後の詩篇も

変革の跡は刻まれています。

 

 

一口にネオ・ロマンチシズムと言っても

はじめからそれが教科書のように存在していたものではなく

秋谷の観念の中に、いわば理想として存在していたとしても

それを同じ志向をもつ詩人たちが共有するのは容易ではなく

一朝一夕に成り立つものではありませんでした。

 

抒情の変革を共有しようとしたその足どりは

第3次「地球」の年表を見るだけでも

たいへんな苦労の連続であったことが推察できます。

 

 

秋谷豊公式ホームページには

「地球年表―昭和22年~昭和45年」という項目があり

第1次から第3次「地球」全巻の目次が掲出されています。

 

ここで「地球」の足どりの輪郭をつかむことができます。

 

この「地球」年表は

① 雑誌「地球」主要内容

② 同人詩集・詩書その他

③ 関連事項その他―付同時代詩史

――の3項目に整理され

「地球」各号の内容は①に案内されています。

 

主要内容は

評論(散文)と作品(詩)に大別され

時に時評、発言などの掲載があるほか

適宜、コメントが★印で付記されてあるのは

後になって制作者の小川和佑が編集したもののようです。

 

このコメントには

秋谷の監修が入ったのでしょうか。

 

評論には、そのタイトルと執筆者の名

作品には、執筆者の名前だけがあります。

 

ここでは

評論とコメントの一部だけをひろってみましょう。

 

 

第3次「地球」第1号(1950年4・1)

〇ネオ・ロマンチシズムの基点(小野連司)

〇ネオ・ロマンチシズムの方法(秋谷豊)

★ネオ・ロマンチシズムを標榜して創刊。この運動は1955年に終了すると予告する。(略) 戦後の

若い主情派の詩人を結集した。

 

第2号(1950年12・15)

〇谷間からの脱出(秋谷豊)

〇ネオ・ロマンチシズムと現代(小野連司)

 

第3号(1951年6・1)

〇ネオ・ロマンチシズムと現代(小野連司)

〇ネオ・ロマンチシズム研究(秋谷豊、三城えふ)

 

第4号(1952年1・1)

〇技術論(小野連司)

〇発想論(秋谷豊)

 

第5号(1952年9・1)

〇イギリスに於けるネオ・ロマンチシズムの系譜(松田幸雄)

 

第6号(1953年3・1)

〇主張(秋谷豊)他。

 

第7号(1953年5・15)

※詩作品のみの掲載。

 

第8号(1953年7・1)

〇堀辰雄論(唐川富夫)

 

第9号(1953年9・1)

〇技術論(小野連司)

〇現代について(杉本春生)

 

第10号(1953年11・20)詩特集。

〇ゴルゴンの笑ひ(杉本春生)

〇主張(地球同人)

 

第11号(1954年2・20)

特集「現代におけるリリシズムの問題」。

〇リリシズムの現代的意義(杉本春生)

〇詩の回復(秋谷豊)

〇丸山薫試論(唐川富夫)

〇リリシズムの詩史的考察(小野連司)

〇主知的抒情詩私見(松永伍一)

★本号より松永伍一、新川和江、粒來哲蔵ら同人に加わる。

 

第12号(1954年5・15)

特集「今日の抒情詩」。

〇座談会「今日の抒情詩」(秋谷豊、唐川富夫、菊地貞三、緒方健一、青柳信房、新川和江)

〇評論 秋谷豊論(杉本春生、菊地貞三)

★本号より更に嶋岡晨、中江俊夫、大野純らの若い世代の新同人を加え新しい展開始ま

る。

 

この年、「地球」主催の第1回詩の講演会を開催。

講師と演題は、

木原孝一「現代詩のジレンマ」

鮎川信夫「荒地の詩について」

安東次男「抒情詩の課題」

沢村光博「ネオ・リアリズムについて」

秋谷豊「現代に於けるリリシズムの問題をめぐって」

唐川富夫(同上)。

 

以上は「詩学」「荒地」「列島」「時間」「地球」等 有力詩誌代表による現代詩をめぐる公開シンポジュー

ム会の観があり盛会であった

――と関連事項の欄に記載があります。

 

第13号(1954年8月号8・20) 

〇近代詩に於けるロマンチシズム(フランシス・スカーフ 松田幸雄訳)

〇伊東静雄論(唐川富夫)

〇詩における言葉(繁田博)

 

第14号(1954年11月号11・1)

〇現代の薄明のなかで(唐川富夫)

〇戦後文学論(秋谷豊)

〇村野四郎論(杉本春生)

〇小野連司論(駒木幸雄)

〇地球詩集批判(井出則雄、大岡信)

 

第15号(1955年1月号1・15)

〇現代詩と思想(唐川富夫)

〇四つのカメラ・アイ(杉本春生)

〇詩人というもの(菊地貞三)

〇アポカリプスについて(松田幸雄)

〇現代詩・1954年(秋谷豊)

〇対話について(粒來哲蔵)

★今年度より秋谷、新川、菊地、杉本、緒方、松田、青柳、粒来、泉沢の10名が編集同人となる。

 

第16号(1955年3月号3・25)

〇椎名鱗三論(唐川富夫)

〇疑問符によるフラグメント(杉本春生)

 

第17号(1955年6月号6・1)

〇金子光晴論(杉本春生)

〇現代小説と詩(唐川富夫)

〇私の詩法(嶋岡、松永、菊地、青柳、新川、大野、粒来、宮沢)

★創刊号に予告の通りネオ・ロマンチシズムの運動を終了、同人を再編成し新しい出発を期す。

 

 

内容を読めないのは残念ですが

出発した年、1950年から毎号のように

活発な詩論が展開されています。

 

批判、反批判のダイナミズムの中から

ネオ・ロマンチシズムは

豊穣な実りを得て運動としての抒情の変革を終えました。

 

運動を終了した1955年には

「地球詩集・第2集」が

秋谷豊編で地球社から発行されました。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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