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2017年11月17日 (金)

新川和江とその周辺/「始発駅」のころ・1953年の詩人たち/木原孝一「星の肖像」へ「断崖」

 

 

現代詩文庫47「木原孝一詩集」「Ⅳ」の「沈丁花」という散文詩が

散文詩集「星の肖像」の中にあることを

巻末の作品論・詩人論「生きている者のための祈り」で

平井照敏が記していることを知りました。

 

現代詩文庫の「木原孝一詩集」(1972年)は

それまでに発表した

「星の肖像」

「木原孝一詩集」

「ある時ある場所」

――という三つの詩集の収録作品を再構成したものと

著者自身が付記しているのですが

「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」「Ⅳ」の4部に仕立てた意図についての案内がないので

少し戸惑います。

 

戦地体験を扱ったもの

敗戦後に書いたもの

(戦後復興後の)現在

戦争以前に書いたもの

――などに分けられていることは

読めばわかるといえばわかるのですが

大元の詩集を手元に持たない読者には

わかるまでに時間を要してしまいます。

 

「Ⅳ」が詩集「星の肖像」と同一ではないにせよ

部分であるなら(部分以上であるかもしれませんが)

戦前の作品とみてよいでしょうか。

 

詩を読みましょう。

 

 

断崖

 

 その道は火成岩の破片や白い砂礫を曝しながら頂上までつづいていた。硫黄の匂いや岩の裂けめからたちのぼる黄白色の煙は僕をいっそう傷ましく見せていた。僕は額からにじみでる汗をぬぐおうともせずに岩の突起に躓きながら歩いていった。間断なく下の谷間にむかって礫の落ちる音が異様な予感を覚えさせたりした。その頂上にはわずかな茂みのなかに菫の花が咲いていた。ふと僕は僕の登って来た谷間を眺めた。黄白色の煙は不気味な沈黙のなかにたちのぼっていた。それは火をつけた一本の巻煙草に似ていた。突然僕は谷のなかに葉の落ちつくした一本の楡の木を見出した。それはなぜか僕に淡い恐怖をさえ感じさせた。断崖。僕はそうした荒凉たる火成岩の谷間のなかにいくつもの僕の断崖を見出していた。

 

(現代詩文庫47「木原孝一詩集」より。)

 

 

これは「Ⅳ」の末尾に配置されている詩です。

 

詩集「星の肖像」でも

末尾にあるのかどうか不明ですが

戦争の影が映っているようには見えない内容であるところに

かえって惹かれるものがあります。

 

戦地を体験する前の

青年詩人の思索、その片鱗――。

 

思索というよりは

日記にちかいつぶやきのようなもの――。

 

 

しかし、

半自伝「世界非生界」の昭和16年(1941年)の項で

太平洋戦争がはじまったこの頃にも

詩人は散文詩集「星の肖像」を書き続けていたことを記しています。

 

断崖はやはり、戦争のメタファーなのでしょうか。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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