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2017年11月26日 (日)

新川和江とその周辺/「始発駅」のころ・1953年の詩人たち/木原孝一「星の肖像」へ「勲章」

 

 

現代詩文庫47「木原孝一詩集」(1972)の「Ⅳ」が

散文詩集「星の肖像」(1954)と同一のものかわかりませんが

「Ⅳ」は半ばにさしかかり

ある女性との恋愛模様を扱います。

 

沙漠

風景

廃船

巻煙草

伝説

懸崖

棕櫚

砂丘

勲章

――の14篇に

貴方、あなた、僕らなどと明示されたり

比喩としても登場したりする

女と男のドラマが展開します。

 

全24篇中の過半を占めるわけですから

「星の肖像」という詩集の意図の一端をこれは示しています。
 

ドラマとは言っても

詩人の内面的心理的思索的なつぶやきのような詩であるうえに

ときには男女の会話も現われるといった散文詩なので

起承転結の形はぼんやりとしか見えません。

 

順を追って

じっくりと読まないと見えてきませんが

戦時下の恋愛詩といってもオーバーではない詩群が集められています。

 

 

この恋愛が半自伝「世界非生界」の昭和16年の項に、

 

家族5人の静かな生活が続く。この4箇月間、ある酒場の女性と恋愛。上野、人形町、京橋とその女性の勤めさきの酒場にかよう。大陸で過した無頼の生活が、そうしたパセティックな愛しか成就させなかった。

――とある女性との交流(交情)であることは

疑う余地がありません。

 

兵士の休息の合間に見え隠れする

雲間の陽射しのような恋ですが

「Ⅳ」の最終詩「断崖」には

女性の影はありません。

 

その前の詩「勲章」で

この恋愛は終焉に至ったことがわかります。
 

 

勲章

 

 さよなら。

 僕は唇が不器用にゆがむのを感じながらそう言った。それは僕の青春の最後にふさわしい勲章だった。幼年のころ胸に飾った鉛の勲章のようにそれは鈍い音をたてた。だが貴方はその言葉を言わなかった。苦いビイルを飲みほすと額のうえで激しい動悸がした。ふと僕は幾月かまえに熱砂の果てに灼きついていた僕の影を思い浮べた。そこへゆこう。あの激しい沙漠のなかへなにもかも埋めてしまうために。貴方の濁った眼をみつめながら僕はたちあがった。その濁った眼のなかには劇薬の匂いのする僕らの不幸があった。まるで拡がらない翼を持った剥製の雉子のように。それでも貴方はまだ最後の言葉を言わなかった。

このままで。

僕らはそう言うよりほかに仕方がなかった。窓の外には無数の星が光っている。冷笑する仮面のように。

 

(現代詩文庫47「木原孝一詩集」より。)

 

 

これは

別離の詩でありましょう。

 

そこへゆこう。あの激しい沙漠のなかへなにもかも埋めてしまうために。

――という詩行が語る真実はしかし

それ以上を想像することしかできません。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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