年末年始に読む中原中也/除夜の鐘
年越しに読む中也なら
なんといってもこれです。
◇
除夜の鐘
除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
千万年も、古びた夜の空気を顫(ふる)わし、
除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
それは寺院の森の霧(きら)った空……
そのあたりで鳴って、そしてそこから響いて来る。
それは寺院の森の霧った空……
その時子供は父母の膝下(ひざもと)で蕎麦(そば)を食うべ、
その時銀座はいっぱいの人出、浅草もいっぱいの人出、
その時子供は父母の膝下で蕎麦を食うべ。
その時銀座はいっぱいの人出、浅草もいっぱいの人出。
その時囚人は、どんな心持だろう、どんな心持だろう、
その時銀座はいっぱいの人出、浅草もいっぱいの人出。
除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
千万年も、古びた夜の空気を顫わし、
除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)
◇
明日が来年になるという日に
この詩を読みながら
獄中にある人々のことに思いを馳せる詩人を思い
胸がいっぱいになります。
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