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2018年1月 3日 (水)

年末年始に読む中原中也/いちじくの葉

 

 

この詩も

春の詩ではありません。

 

 

いちじくの葉

 

いちじくの、葉が夕空にくろぐろと、

風に吹かれて

隙間(すきま)より、空あらわれる

美しい、前歯一本欠け落ちた

おみなのように、姿勢よく

ゆうべの空に、立ちつくす

 

――わたくしは、がっかりとして

わたしの過去の ごちゃごちゃと

積みかさなった思い出の

ほごすすべなく、いらだって、

やがては、頭の重みの現在感に

身を托(たく)し、心も托し、

 

なにもかも、いわぬこととし、

このゆうべ、ふきすぐる風に頸(くび)さらし、

夕空に、くろぐろはためく

いちじくの、木末(こずえ) みあげて、

なにものか、知らぬものへの

愛情のかぎりをつくす。

 

(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)

 

 

美しい、

前歯一本欠け落ちた

おみな

 

姿勢よく

ゆうべの空に、

立ちつくす

 

 

第1連の言葉の

この不思議な力(ちから)は何でしょうか。

 

 

くどくどとああでもないこうでもないと

過去の思い出のこんぐらがってるのに

身も心もまかせている自分というのが

きっとだれにでもあって

いつしか頭さえ重くなってもなお

ごちゃごちゃと考えあぐねている……。

 

この詩は

そういうがんじがらめの心の状態を断ち切って

なんにも言わないことにして

首のあたりを風にさらして

いちじくのこんもりと繁る梢を見あげては

何ものか見知らぬ存在に

愛情をそそごうとする詩人の意志を表明します。



過去にとらわれているよりも

明日(あす)を見ようとします。

 

 

そのきっかけになった

夕方のいちじくの葉群れ。

 

 

詩人はここでも

自らを勇気づけ

詩を読む若者を元気づけます。



若者ばかりではなく

齢(よわい)を重ねた人々をも

勇気づけます。

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