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2018年1月11日 (木)

年末年始に読む中原中也/春と赤ン坊

 

 

いま目の前に

小学校の生徒たちがいれば

みんなで声を合わせて

朗誦してもらいたい。

 

中学生でも

高校生でも

大学生でもよい

 

おばさんたちでも

おじいさんたちでも。

 

 

春と赤ン坊

 

菜の花畑で眠っているのは……

菜の花畑で吹かれているのは……

赤ン坊ではないでしょうか?

 

いいえ、空で鳴るのは、電線です電線です

ひねもす、空で鳴るのは、あれは電線です

菜の花畑に眠っているのは、赤ン坊ですけど

 

走ってゆくのは、自転車々々々

向(むこ)うの道を、走ってゆくのは

薄桃色(うすももいろ)の、風を切って……

 

薄桃色の、風を切って

走ってゆくのは菜の花畑や空の白雲(しろくも)

――赤ン坊を畑に置いて

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

 

 

だれか一人が口ずさみはじめると

自分も唱和したくなる

この不思議な詩行の連続――。

 

呆気(あっけ)に取られているまもなく

仰天の世界へ身体ごと運ばれていきます。

 

いちめんの菜の花畑には

生れたばかりの赤ん坊が眠っているという幻想は

とんでもなく非現実的のようで

否定しようになくありそうな風景で

ずっとそのままそこにそうしていてほしい

幸福を絵に描いたような空間のようですけれど

詩(人)は

その上の空に鳴っている電線の唸り声を聞かざるを得ないのです。

 

幸福すぎてはかない風景の

永遠を願うかのように

この風景を強固にしたくなったのでしょう、

きっと。

 

幸福と幸福すぎることの不安と。





すると、

ここに自転車が

薄桃色にかすむ空の

風を切って走ってゆくと

菜の花畑も空の白雲も

いっしょくたになって

走っていってしまいます。

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