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2018年1月 2日 (火)

年末年始に読む中原中也/港市の秋

 

 

紺青の空は秋の空が一番というのは

観念反応というかパタン認識というか

新年の青天白日も見事なものですね。

 

こちらの詩は秋天、それも朝陽を歌います。

 

 

港市の秋

 

石崖(いしがけ)に、朝陽が射して

秋空は美しいかぎり。

むこうに見える港は、

蝸牛(かたつむり)の角(つの)でもあるのか

 

町では人々煙管(キセル)の掃除(そうじ)。

甍(いらか)は伸びをし

空は割れる。

役人の休み日――どてら姿だ。

 

『今度生(うま)れたら……』

海員(かいいん)が唄(うた)う。

『ぎーこたん、ばったりしょ……』

狸婆々(たぬきばば)がうたう。

 

  港(みなと)の市(まち)の秋の日は、

  大人しい発狂。

  私はその日人生に、

  椅子(いす)を失くした。

 

(「編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

 

 

上京してまもなく

詩人は恋人泰子を失います。

 

ひとりぼっちがつづくある秋の日

横浜の埠頭を散策する詩人。

 

朝早くから港の町を

ふらふらと歩みくたびれて

石段にしゃがみこんで遥かな海を眺めます。

 

いましがた出合った港市の

なんと穏やか過ぎる光景ばかりであったこと。

 

ふと、自分に入り込めない景色であることに

気づいてしまいます。

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