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2018年1月 8日 (月)

年末年始に読む中原中也/冬の明け方

 

 

朝の6時なのに眠いというのは

いかにも中也らしい本音ですね。

 

深夜に詩を書いたり

書物を読んだりしているわけですから。

 

そこのところを押さえておかないと

頭も眠いというのを理解できません。

 

 

冬の明け方

 

残(のこ)んの雪が瓦(かわら)に少なく固く

枯木の小枝が鹿のように睡(ねむ)い、

冬の朝の六時

私の頭も睡い。

 

烏(からす)が啼(な)いて通る――

庭の地面も鹿のように睡い。

――林が逃げた農家が逃げた、

空は悲しい衰弱。

     私の心は悲しい……

 

やがて薄日(うすび)が射し

青空が開(あ)く。

上の上の空でジュピター神の砲(ひづつ)が鳴る。

――四方(よも)の山が沈み、

 

農家の庭が欠伸(あくび)をし、

道は空へと挨拶する。

     私の心は悲しい……

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)

 

 

烏(からす)が啼(な)いて通る――

庭の地面も鹿のように睡い。

 

――というあたりは

眠いことが想像できれば

ついていけますね。

 

 

やがて薄日(うすび)が射し

青空が開(あ)く。

上の上の空でジュピター神の砲(ひづつ)が鳴る。

 

――というあたりも

朝がおとずれて

空に青が広がり

お天道様(おてんとうさま)が世界を支配しはじめるころの

無敵の神々しさをバッチリとらえた

見事な表現です。

 

ズドンパチパチという音が

本当に聞こえてくるかのようなお出まし!

 

今ごろの太陽の現れ方を

早朝に起床する人ならば

拍手喝采したくなりますよ。

 

朝の6時なら

木星と火星が大接近したのを中也も見たかもしれません。

 

 

ところが

この詩が歌うのは

人の知らない悲しみです。

 

今日のところは

その謎解きはやめておきます。

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