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2018年1月12日 (金)

年末年始に読む中原中也/雲雀


菜の花畑に囲まれたあぜ道に
長い間詩人はたたずんでいたのでしょう。

そこには
詩心をそそのかすに足りるモチーフが
次から次に現われました。

おのずと
雲雀の声が捉えられます。



雲 雀

ひねもす空で鳴りますは
ああ 電線だ、電線だ
ひねもす空で啼(な)きますは
ああ 雲の子だ、雲雀奴(ひばりめ)だ

碧(あーお)い 碧い空の中
ぐるぐるぐると 潜りこみ
ピーチクチクと啼きますは
ああ 雲の子だ、雲雀奴だ

歩いてゆくのは菜の花畑
地平の方へ、地平の方へ
歩いてゆくのはあの山この山
あーおい あーおい空の下

眠っているのは、菜の花畑に
菜の花畑に、眠っているのは
菜の花畑で風に吹かれて
眠っているのは赤ん坊だ?

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えてあります。)



「春と赤ン坊」の自転車は
絶妙な脇役(補助線)でしたが
この詩には王者、雲雀(ひばり)が登場します。

「春と赤ン坊」の流れで読むと
そうなのですが
「雲雀」はタイトルにも取られた通り
主題(テーマ)です。

ということは
雲雀を歌っているうちに
菜の花畑に眠る赤ン坊のシーンにたどり着いたということになります。



そう単純なことではないようなので
断言は避けますが
一つだけ言っておきたいのは
この詩の最終行、
眠っているのは赤ん坊だ?
――の「?」のことです。

「だ」という断定の助動詞の次に
「?」を付加した詩人の意図はどこにあるのでしょう。

謎解きのカギの一つはここにありそうです。

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