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2018年2月25日 (日)

中原中也・詩の宝島/ジュピター神の砲(ひづつ)/「冬の明け方」その3

 

 

「冬の明け方」の第3、4連に、

四方(よも)の山が沈み、

農家の庭が欠伸(あくび)をし、

道は空へと挨拶する。

――とあるのは

次第に朝が広がっていく様子を

遠景から近景へと展開する

実はリアルで緻密な描写であることに気づくでしょうか?

 

 

第1連と第2連では

陽射しの出る前のそれを

擬人法をまじえて

こちらもリアルに描写していますね。

 

描写といっても

写実のことではありませんが。

 

残(のこ)んの雪 は、少なく固く

枯木の小枝は、(鹿のように)睡い

私の頭も、睡い

烏(からす)は、泣いて通る

庭の地面は、(鹿のように)睡い

林は、逃げた

農家は、逃げた

空は、悲しい衰弱

――という具合。

 

 

青空が開けて

鳴り響くのが

ジュピター神の砲(ひづつ)です。

 

太陽は

姿形(すがたかたち)を見せずに

音として登場します。

この音は

聞こえない音、沈黙の音楽(佐々木幹郎)です。

 

陽の光は

ジュピター神の号砲=音が鳴り響くかのようにして 

自ずと射しはじめるのです。

 

このように

山、農家の庭、道……と

あたりに朝が訪れますが

私の心は悲しいのです。

 

 

今回はここまで。

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