中原中也・詩の宝島/ジュピター神の砲(ひづつ)/「冬の明け方」その2
ジュピター神の砲(ひづつ)が
実際に鳴るわけではありません。
にもかかわらず
聞こえる音は
雲間をバリバリ割る陽の光のせいでしょうか。
待望する心の
錯覚でしょうか。
冬の朝の寒さを
じっと耐えて待つ人々の
幻覚でしょうか。
◇
「冬の明け方」は
ジュピター神の登場の後、
四方(よも)の山が沈み、
農家の庭が欠伸(あくび)をし、
道は空へと挨拶する
――という景色を歌います。
青空が荘厳に華麗に幕開けし
風景が日常を取り戻しても
心はいっこうに動きません。
◇
ジュピター神の恩恵を
「冬の明け方」の詩人は歌おうとしないのです。
◇
今回はここまで。
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