中原中也・詩の宝島/「山羊の歌」/トラゴイディア(悲劇)と「羊」への愛着
ギリシア悲劇を意味する「トラゴーイディアー」(ギリシア語: τραγῳδία)は、
「山羊」(ディオニューソスの象徴の1つ)を意味する「トラゴス」(ギリシャ語: τραγος, tragos)と、
「歌」を意味する「オーイデー」(ギリシャ語: ᾠδή, oide)の合成語であり、
「山羊の歌」の意味。
英語のtragedy等も、この語に由来する。
――Wikipediaは
「ギリシア悲劇」をこのように概括(がいかつ)しています。
中原中也が
第1詩集「山羊の歌」に
このような含意を込めたかどうか断言はできませんが
羊への愛着は否定しようにありません。
◇
ここで「山羊の歌」のネーミングについて
幾つかのエピソードを見ておきましょう。
詩人は
「山羊の歌」の由来について
記述することはありませんでしたが
口頭の証言が伝わっています。
そのうちの一つ。
大岡昇平が
中也の晩年の友人であり詩人である高森文夫に取材した話を
紹介しています。
◇
その内容をまとめてみると
① 中原中也は、第1詩集のタイトルを、校正の段階になっても、「山羊の歌」か「修羅街輓歌」かと迷い、高森文夫に相談した。
② 中原中也は未年(ひつじどし)の生まれだったために、自分をおとなしい人間だと思いたがった。山羊と羊の違いは、角の有無にあり、山羊にしたのは、攻撃されれば抵抗するぞという意気込みを示した。
③ 「自分は顎が細く、耳が立っているから山羊だ」と、高森文夫に語ったことがある。
④ マラルメの肖像を見て、親近感を表明した、とも高森に語ったという。
――ということです。
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰ「解題篇」より。)
◇
テキスト(作品)の外部の言葉ですが
なかなか説得力あるエピソードですね。
◇
今回はここまで。
« 中原中也・詩の宝島/「幼獣の歌」の太古 | トップページ | 中原中也・詩の宝島/「羊」への愛着/「初恋集 むつよ」 »
「064面白い!中也の日本語」カテゴリの記事
- 中原中也・詩の宝島/ベルレーヌーの足跡(あしあと)/「ポーヴル・レリアン」その3(2018.08.11)
- 中原中也・詩の宝島/ランボーの足跡(あしあと)/「心象」の空(2018.06.28)
- 中原中也・詩の宝島/ランボーの足跡(あしあと)/「少年時」から「夏」へ(2018.06.27)
- 中原中也・詩の宝島/ランボーの足跡(あしあと)/「失せし希望」の空(2018.06.24)
- 中原中也・詩の宝島/ランボーの足跡(あしあと)/「木蔭」の空(2018.06.23)
« 中原中也・詩の宝島/「幼獣の歌」の太古 | トップページ | 中原中也・詩の宝島/「羊」への愛着/「初恋集 むつよ」 »
コメント