中原中也・詩の宝島/「太陽と肉体」の半獣神たち
ヴィーナス
サチール
フォーヌ
ニンフ
パン
シベール
アスタルテ
アフロデテ
エロス
カリピイジュ
アリアドネ
テーゼ
リジアス、
ゼウス
ユウロペ
ヘラクレス
ドリアード
セレネー
エンデミオン
……。
「太陽と肉体」に登場する神々もしくは英雄を拾うと
このようなラインアップになります。
ランボーはこの詩で
古代ギリシアの神々への讃歌を歌い
キリスト教の異教である世界を追惜したということになっています。
アンチクリストの詩ということですが
ここではそのことが問題なのではありません。
詩の冒頭部に現われる
次の下りに目を凝(こ)らします――。
◇
若々しい古代の時を、放逸な半人半山羊神(サチール)たちを。
獣的な田野の神々(フォーヌ)を私は追惜します、
愛の小枝の樹皮をば齧(かじ)り、
金髪ニンフを埃及蓮(はす)の中にて、接唇しました彼等です。
地球の生気や河川の流れ、
樹々の血潮(ちしお)が仄紅(ほのくれない)に
牧羊神(パン)の血潮と交(まざ)り循(めぐ)った、かの頃を私は追惜します。
当時大地は牧羊神の、山羊足の下に胸ときめかし、
牧羊神が葦笛とれば、空のもと
愛の頌歌(しょうか)はほがらかに鳴渡ったものでした、
野に立って彼は、その笛に答える天地の
声々をきいていました。
黙(もだ)せる樹々も歌う小鳥に接唇(くちづけ)し、
大地は人に接唇し、海という海
生物という生物が神のごと、情けに篤いことでした。
(※改行を加え、文意をわかりやすくしました。編者。)
◇
いわゆる、パンの時代。
自然と神々たちが融和し
自由奔放で
光と音楽に溢れた生気が躍動する世界。
その時代に活躍する
半人半山羊神(サチール)たち
獣的な田野の神々(フォーヌ)
牧羊神パン
金髪ニンフ
……。
とりわけ目を引くのが
ニンフ以外の
半人半獣の神々です。
中でも
羊族(属)の神々が
アストラカンのイメージへと連なっていきます。
◇
今回はここまで。
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