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2018年4月17日 (火)

中原中也・詩の宝島/ランボーを介した交流<はじまり・その10>/「Au Rimbaud」続

 

 

病状が悪化する富永太郎を訪ねた小林秀雄が

富永から渡された紙片に記されていたのが

「Au Rimbaud」でした。

 

 

Au Rimbaud

 

   Ⅰ

 

Kiosque au Rimbaud,

“Manila” à la main,

Le ciel est beau,

Eh! tout le sang est Pain.

 

   Ⅱ

 

Ne voici le poète,

Mille familles dans le même toit

Revoici le poète :

On ne fait que le droit.

 

   Ⅲ

 

Que Dieu le luise et le pose!

Qu'il ne voie pas ouvrir

Les parasols bleus et rose

Parmi les flots : les martyrs!



(「ランボオⅢ」より。)

 

 

小林秀雄は

この詩を暗誦するほどに読み慣れ

長く記憶していたため

「ランボオⅢ」(1947年)に書き出すことができました。

 

いっぽう、中原中也は

富永太郎の死に際して

太郎の残した作品を集中して読み

一時はそれらを所有していましたが

遺稿集の発行計画が進む中で返却します。

 

「ランボオへ」は

その中にありました。

 

そのあたりの事情を

中也が富永家に送った二つの書簡で

知ることができます。

 

 

大正14年(1925年)

11月16日 富永家宛 封書

 

   表 府下代々木富ヶ谷1456 富永様

   裏 16日

 

発表順に書き付けます。

「橋の上の自画像」(1924、6、頃作)

「秋の悲嘆(ママ)」(1924、10、作)

「鳥獣剥製所」(1925年、1、作)

「四行詩」「頌歌」「恥の歌」「無題」(1925、2、頃作)

   此の四つと共に作された「焦燥」があります。これは一時的な或感情のために発表さ

れなかつたのですが、韻文中最も立派なもので、自分でも余程自信のあつたものです。

「断片」(1925、4、作)

「ランボオへ」(1925、7、作)

   其の他、ボオドレエルの「人工天国」中の、「ハシーシュの詩」の箇所だけの翻訳があ

ります。

 

茶色の原稿袋の中に、仙台にをられた頃の作が数篇ありますが、これは自分でも発表し

たくないと云ってゐられたものです。

 

発表された原稿は近々におとどけします

 

 

11月下旬(推定) 富永家宛 封書

 

これは最初仏語で書かれたものです。それは富永君の床のまはりの何処かにあることだ

と思はれます。今年7月末頃の作で、そして最後の詩です。

 

ランボオへ(未定稿)

               富永太郎

 

  1

 

キオスクにランボオ

手にはマニラ

空は美しい

えゝ 血はみなパンだ        

 

  2

 

詩人が御不在になると

千家族が一家で軋めく

またおいでになると

掟(おきて)に適つたことしかしない

 

  3

 

神様があいつを光らして、横にして下さるやうに!

それからあれが青や薔薇色の

パラソルを見ないやうに!

波の中は殉教者でうようよですよ

 

(「新編中原中也全集」第5巻「日記・書簡」より。※「富永太郎詩集」収録のものとは、表記

に若干の違いがあります。編者。)

 

 

大岡昇平は「ランボオへ」について

フランス語に未熟だった中原中也のために

富永太郎がフランス語詩を

日本語詩にしたものと推理しています。

 

 

今回はここまで。

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