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2018年5月17日 (木)

中原中也・詩の宝島/ランボーを介した交流<はじまり・その26>/恋の別れ

 

 

「在りし日の歌」の「永訣の秋」が

別れの章であることは

章題の字義通りのことです。

 

この章に

「あばずれ女の亭主が歌った」が配置されていることは

「或る男の肖像」が配置されていることとともに

瞠目(どうもく)しないでは済まされないことです。

 

この詩はさらに

「ゆきてかへらぬ」や

「村の時計」や

「米子」が配置されていることにも

目を奪うことになります。

 

いずれにも女性が登場し

この女性たちは何のつながりもないように見えますが

長谷川泰子の影を否定することができません。

 

 

あばずれ女の亭主が歌った

 

おまえはおれを愛してる、一度とて

おれを憎んだためしはない。

 

おれもおまえを愛してる。前世から

さだまっていたことのよう。

 

そして二人の魂は、不識(しらず)に温和に愛し合う

もう長年の習慣だ。

 

それなのにまた二人には、

ひどく浮気な心があって、

 

いちばん自然な愛の気持を、

時にうるさく思うのだ。

 

佳(よ)い香水のかおりより、

病院の、あわい匂(にお)いに慕いよる。

 

そこでいちばん親しい二人が、

時にいちばん憎みあう。

 

そしてあとでは得態(えたい)の知れない

悔(くい)の気持に浸るのだ。

 

ああ、二人には浮気があって、

それが真実(ほんと)を見えなくしちまう。

 

佳い香水のかおりより、

病院の、あわい匂いに慕いよる。

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)

 

 

この詩はなかでも

恋愛の爛熟(らんじゅく)を歌っていて

ひときわ元気です。

 

「或る男の肖像」の彼が

死んでいるのに

この詩では

生の頂点にある男女が主役です。

 

とはいえ

この詩は

永訣を歌った絶唱詩群の一つです。

 

 

今回はここまで。

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