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2018年6月24日 (日)

中原中也・詩の宝島/ランボーの足跡(あしあと)/「失せし希望」の空

 

 

◇

 

失せし希望

 

  暗き空へと消え行きぬ

  わが若き日を燃えし希望は。

 

夏の夜の星の如(ごと)くは今もなお

  遐(とお)きみ空に見え隠る、今もなお。

 

暗き空へと消えゆきぬ

  わが若き日の夢は希望は。

 

今はた此処(ここ)に打伏(うちふ)して

  獣(けもの)の如くは、暗き思いす。

 

そが暗き思いいつの日

  晴れんとの知るよしなくて、

 

溺れたる夜の海より

  空の月、望むが如し。

 

その浪(なみ)はあまりに深く

  その月はあまりに清く、

 

あわれわが若き日を燃えし希望の

  今ははや暗き空へと消え行きぬ。

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)

 

◇

 

「木蔭」で歌われた空は

「失せし希望」では

明確に暗い空となります。

 

かくて今では朝から夜まで

忍従(にんじゅう)することのほかに生活を持たない

怨みもなく喪心(そうしん)したように

空を見上げる私の眼(まなこ)――

 

「木蔭」から

「失せし希望」への推移。

 

あわれわが若き日を燃えし希望の

  今ははや暗き空へと消え行きぬ。

 

◇

 

この暗い空は

希望が消えて行った空です。

 

ではその空を

恨めし気に見ているのでしょうか?

 

今はた此処(ここ)に打伏(うちふ)して

  獣(けもの)の如くは、暗き思いす。

――とあり、

 

溺れたる夜の海より

  空の月、望むが如し。

――とあるのですから、

暗然は確かでしょうね。

 

◇

 

しかし第2連に、

 

夏の夜の星の如(ごと)くは今もなお

  遐(とお)きみ空に見え隠る、今もなお。

――とあるのも見過ごせません。

 

希望は

夏の夜の星のように

いまもなお見え隠れしています。

 

◇

 

にもかかわらず

やはりこの詩が歌う重心は

消えてなくなった希望です。

 

消えてなくなったという事実であり

希望の中身ではありません。

 

◇

 

かつて存在しましたが

いまは無い――。

 

時の経過を

ここで刻んでおかなければなりませんでした。

 

◇

 

途中ですが

今回はここまで。

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