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中原中也を歌う(曲と歌:桜木うさこさん)

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2018年8月30日 (木)

中原中也・詩の宝島/ベルレーヌの足跡(あしあと)/「マンドリン」から「春の夜」へ

 

 

「サーカス」が

1929年(昭和4年)発行の「生活者」に初出したとき

なぜ「無題」だったのでしょうか。

 

詩の中には

きっちりとサーカスの語があるにもかかわらず

タイトルをサーカスとしなかったのは

この詩の多彩で複雑なモチーフを

作者はサーカスに限定する必要を認めなかったからでしょうか。

 

サーカスという言葉が

世間にまだ浸透しておらず

ハイカラ過ぎると見なしたためだったのでしょうか。

 

ほかの理由があったのでしょうか。

 

 

「サーカス」への

ベルレーヌの「木馬」の影響を辿っているうちに

「山羊の歌」の第4番詩「春の夜」にも

ベルレーヌの影が落ちているという案内に巡り合います。

 

中原中也のベルレーヌ翻訳の仕事を追うと

「月」

「サーカス」

「春の夜」

――と続く「山羊の歌」の第2番詩から第4番詩までが

ワイルド、ボードレール、ベルレーヌら

海外の詩人たちの影響を受けていることが明らかになります。。

 

中原中也の詩の中でも

際立った難解詩として聳え立つ「春の夜」への糸口は

ベルレーヌやブラウニングの詩に見い出すことになります。

 

まずは「春の夜」を読みましょう。

 

 

春の夜

 

燻銀(いぶしぎん)なる窓枠の中になごやかに

  一枝(ひとえだ)の花、桃色の花。

 

月光うけて失神し

  庭の土面(つちも)は附黒子(つけぼくろ)。

 

ああこともなしこともなし

  樹々(きぎ)よはにかみ立ちまわれ。

 

このすずろなる物の音(ね)に

  希望はあらず、さてはまた、懺悔(ざんげ)もあらず。

 

山虔(やまつつま)しき木工(こだくみ)のみ、

  夢の裡(うち)なる隊商(たいしょう)のその足竝(あしなみ)もほのみゆれ。

 

窓の中にはさわやかの、おぼろかの

  砂の色せる絹衣(きぬごろも)。

 

かびろき胸のピアノ鳴り

  祖先はあらず、親も消(け)ぬ。

 

埋(うず)みし犬の何処(いずく)にか、

  蕃紅花色(さふらんいろ)に湧(わ)きいずる

      春の夜や。

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)

 

 

次にベルレーヌの「Mandline」です。

 

中原中也はこの詩を翻訳していませんが

原作を読んだことは間違いなく

川路柳虹訳を参照した可能性も高く

「春の夜」の詩世界と非常に近似した空気が漂う詩です。

 

 

マンドリーヌ  

川路柳虹訳

 

絹の短い胴着(どうぎ)をきて

長い裳裾(もすそ)は後に曳く、

その優しさ、その楽しさうな様子、

そのしとやかな青い衣(きぬ)の影。

 

うす薔薇色の月の光りに

恍惚(うつとり) 取り巻かれ、

そよ吹く軟らかな風につれて

囀りしきるマンドリーヌ。

 

(「ヹルレーヌ詩集」より。「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰ「解題篇」より孫引きしました。)

 

 

次には先に読んだ

中原中也訳の「Ⅴ (たをやけき手の接唇くるそのピアノ)」も参照しておきましょう。     

 

 

Ⅴ (たをやけき手の接唇くるそのピアノ)     ポール・ヴェルレーヌ

 

     ほがらかのクラヴサン

     その嬉しさよ、うるささよ。    ペトリュス・ボレル

 

たをやけき手の接唇(くちづ)くるそのピアノ

きらめけり薔薇と灰とのおぼろなる夕(ゆふべ)の裡に、

軽やかに羽搏く音かその音色

疲れて弱く媚やかに、

物怖ぢしたる如くにも、ためらひつつは去(あ)れもゆく、

移り香ながき部屋よりは。

 

ふとし遇ふこの揺籃(ゆりかご)のいかならん

たゆけくも今日をし生くるわれを慰む。

何をかわれに欲りすとや、戯唄(ざれうた)とてか。

何をかわれに欲りしけるとらへがたなき折返し、

絶えんとするにあらざるや、細目に開けし

窓よりは、木庭の方(かた)へ

 

(「新編中原中也全集」第3巻「翻訳」より。ルビは中原中也が振ったものだけを表記しました。編者。)

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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