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2018年8月11日 (土)

中原中也・詩の宝島/ベルレーヌーの足跡(あしあと)/「ポーヴル・レリアン」その3

 

 

「ポーヴル・レリアン」は

ベルレーヌが書いた「呪われた詩人たち」の一つです。

 

トリスタン・コルビエール

アルチュール・ランボー

ステファン・マラルメ

マスリーヌ・デボルド=ヴァルモール

ヴィリエ・ド・リラダンとともに

最終形である増補改訂版「呪われた詩人たち」に

発表されたのは1888年でした。

 

 

中原中也は

この増補改訂版が収録された「ヴェルレーヌ著作集」第4巻を

翻訳のテキストとし

このうち

コルビエール(初出「社会及国家」)

ポーヴル・レリアン(初出「白痴群」第5号)

ランボー(未発表)

――の3作を

次々に訳出しました。

 

1929年(昭和4年)ころのことでした。

 

ベルレーヌの詩の翻訳は世の中で盛んに行われていた時期ですが

散文の翻訳はほとんどなく

この仕事自体が先駆的であったそうです。

(「新編中原中也全集」第3巻「翻訳・解題篇」。)

 

 

中原中也訳の「ポーヴル・レリアン」を

引き続いて読みましょう。

 

 

ポーヴル・レリアン        ポール・ヴェルレーヌ

         ――Les Poètes mauditsより――

 

(前回からつづく)

 

 其の後ポーヴル・レリアンは小さな批評集を出した、――いやはや、批評集、批評だかな

んだか、寧ろ激賞集――数人の知られざる詩人に関する批評集である。それには『難解

者』と銘打つた。諸君は未だ読まれまい。わけてもアルチュル・ランボオの章を。ランボオと

いへばレリアンが自分の宿命の或るものを象徴してゐるといふので愛したものだ。

 

盗まれた心

 

愁ひに満ちて私の心は船尾に行つて涎を垂らす、

安煙草にむかついて私の心。

スープを吐瀉する、

愁ひに満ちて私の心は船尾に行つて涎を垂らす。

一緒になつてゲラゲラ笑ふ

世間の駄洒落に打ちのめされて、

愁ひに満ちて私の心は船尾に行つて涎を垂らす、

安煙草にむかついている私の心は。

 

諷刺詩流儀の雑兵気質の

奴等の駄洒落が私を汚した!

舵の所(とこ)には壁画が見える

諷刺詩流儀の雑兵気質の、

おゝ、玄妙不可思議の波浪

私の心を洗つてくれよ。

諷刺詩流儀の雑兵気質の、

奴等の駄洒落が私を汚した。

 

 

フォーヌの頭

 

緑金に光る葉繁みの中に、

接唇(くちづけ)が眠る大きい花咲く

けぶるがやうな葉繁みの中に、

活々として、佳き刺繍(ぬいとり)をだいなしにして

 

ふらふらフォーヌが二つの目をだし

その皓い歯で真紅(まっか)な花を咬むでゐる。

古酒と血に染み朱(あけ)に浸され、

その唇は笑ひに開く、枝々の下。

 

と、逃げかくれた――まるで栗鼠、――

彼の笑ひはまだ葉に揺らぎ

沈思の鷽と怖気づく

森の黄金(をがね)の接唇(くちづけ)を、我は見る。

 

(「新編中原中也全集」第3巻「翻訳」より。読みやすくするために、改行を加えました。編者。)

 

 

ベルレーヌは

ランボーの詩をここで2篇だけ紹介しています。

 

ランボオといへばレリアンが自分の宿命の或るものを象徴してゐるといふので愛したものだ。

――と記した流れの中でのことですから

二つの詩に自身の宿命の一部を読み取ったものでしょう。

 

「盗まれた心」は

解釈が様々に乱れ飛ぶ詩ですが

詩の背後にランボーを傷つけた事件の体験があり

ランボーの痛手への同情を読むことが可能でしょうし

「フォーヌの頭」は

創造の神(カトリシズムとは異なる)への

敬慕とか称賛とかの

立ち位置の近似の表明を読むことが可能でしょう。

 

ベルレーヌは

ランボーの人間を愛したのです。

 

 

「盗まれた心」に関しては

何年か前に書いた鑑賞記がありますので

こちらを参考にしてください。

→(中原中也・全詩アーカイブ)「盗まれた心」

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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