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2018年8月29日 (水)

中原中也・詩の宝島/ベルレーヌの足跡(あしあと)/「木馬」から「サーカス」へ

 

 

ここで

「木馬」と「サーカス」の繋がりについての

重要なニュースです。

 

「木馬」が1929年(昭和4年)以前に制作された可能性について、

「山羊の歌」の第3番詩「サーカス」のサーカスという言葉が

一般に普及したのは

昭和8年(1933年)頃のことで

それ以前は曲馬団または曲馬だったからという理由を

「新編中原中也全集」が詳細に案内しています。

 

ここでその解題に立ち止まって

注目してみましょう。

 

中原中也が訳したベルレーヌの「木馬」が

中也の詩の人気No1とも言われている

「サーカス」に反映しているというものですから

その二つに繋がりがあるとすれば

思わず身を乗り出す姿勢になります。

 

 

タイミングのよいことに

「木馬」の中原中也訳と

川路柳虹訳とを読んだばかりですから

もう1度、その第4連に目を凝(こ)らしましょう。

 

うつとりするだよ、曲馬に行つて

鱈腹遊んだ時のやうだよ!

腹には怡しく頭に悪くも、

世間に悪くも二人はよろしく。

――とあるのが中原中也の訳。

 

そこで二人が飽きるまで

よろこびもつれよ、曲馬のなかで。

頭(かしら)は重くも、腹ではたのしく、

世間はつらくも、二人はたのしく。

――とあるのが川路柳虹訳。

 

二つの訳の中に現われる「曲馬」に

新全集は鋭い眼差しを向けます。

 

 

サーカスという言葉が一般に普及する以前は

曲馬団もしくは曲馬が使われていました。

 

サーカスの語が使われるようになったのは

1933年(昭和8年)頃のことでした。

 

 

「サーカス」が作られたのは

1925年(大正14年)から1926年(大正15年)。

 

それが発表されたのは

倉田百三主宰の「生活者」という雑誌(1929年)で

その時には「無題」(というタイトル)でした。

 

それが第1詩集「山羊の歌」の編集段階(または校正段階)で

「サーカス」のタイトルに改題されます。

 

改題された1932年というこの時期は

ベルレーヌの「木馬」を翻訳した時期にあたります。

 

 

ここで「サーカス」を呼びましょう。

 

 

サーカス

 

幾時代かがありまして

  茶色い戦争ありました

 

幾時代かがありまして

  冬は疾風(しっぷう)吹きました

 

幾時代かがありまして

  今夜此処(ここ)での一(ひ)と殷盛(さか)り

    今夜此処での一と殷盛り

 

サーカス小屋は高い梁(はり)

  そこに一つのブランコだ

見えるともないブランコだ

 

頭倒(あたまさか)さに手を垂れて

  汚れ木綿(もめん)の屋蓋(やね)のもと

ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

 

それの近くの白い灯(ひ)が

  安値(やす)いリボンと息を吐(は)き

 

観客様はみな鰯(いわし)

  咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と

ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

 

      屋外(やがい)は真ッ闇(くら) 闇の闇

      夜は劫々と更けまする

      落下傘奴(らっかがさめ)のノスタルジアと

      ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)

 

 

「サーカス」は

ベルレーヌの「木馬」に繋がっていると言えるわけです。

 

それは詩想とかテーマとかへの繋がりとは

別の筋(すじ)のことかもしれませんが

多彩な「サーカス」の世界を生み出した

一つのモチーフ(動機)であったことは

間違いないことでしょうから

やはり繋がりということで重大な意味を持ちます。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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