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2018年11月19日 (月)

中原中也・詩の宝島/ベルレーヌの足跡(あしあと)/補足2・橋本一明の読み・その3

 

 

 

橋本一明がランボーに巡り合ったのは

原口統三を通じててあったのでしょうか

原口を知る以前のことだったのでしょうか。

 

そのことはおいおいわかって来ることでしょうけれど

ベルレーヌと巡り合ったのは

ランボーを通じてであったことは

間違いないことでしょう。

 

橋本一明が

ベルレーヌをどのように読んだのかを知るには

どのように翻訳したのかを見ることが第一ですし

最終的にも評論よりも翻訳を読むことですから

なにがなんでも

まずは翻訳を一つでも読んでみましょう。

 

 

空は 屋根のむこうに……

 

空は 屋根のむこうに あんなにも

    青く しずかです

一本の木が 屋根のむこうに てのひらを

    ゆすっています

 

いま見える あの空に 鐘の音が

    しずかに わたり

いま見える あの木の上に 一羽の鳥が

    嘆きの歌を うたっています

 

神さま 神さま 人生はあそこにあります

    素朴に また おだやかに

あの平和な ざわめきは 町から

    きこえてくるのです

 

――おお そこにたえまなく泣いているおまえ

    どうしてしまった

お言い そこにいるおまえ おまえの青春を

    どうしてしまった?

 

(角川書店「世界の詩集8・ヴェルレーヌ詩集」より。)

 

 

この詩は

1873年、ランボー銃撃の科(とが)で下獄し

2年間をモンス監獄での暮らしを余儀なくされるなかで

書きはじめられたものの一つですが

詩集は1881年に出版されましたから

出獄後の作品も収められています。

 

というわけですから

詩人は鐘の音を獄にあって聴いているとも

獄の外にあって聴いているとも

どちらにも受け取ることができます。

 

どちらにしても

来し方(人生)を振り返って

にじみ出てくるような深い後悔の気持ちが

まるで1枚の絵を眺めるかのように

くっきりとした輪郭のなかに捉えられています。

 

どうしてしまったんだお前、お前の青春。

 

 

振り払おうとしても振り払おうとしても

決して消え去らない後悔の中にある詩人は

けれども自己を見棄てていません。

 

空が

屋根のむこうに

青くしずか

 

一本の木が

屋根のむこうで

揺れている

 

鐘の音が

空をわたる

 

木の上で

一羽の鳥が

嘆きの歌を歌っている

 

――というだけが歌われているのは

ありきたりの風景ですが

ありきたりの風景を歌う詩は

神さまに呼びかけるときに

なんらかの変成を生むのでしょうか?

 

 

神への祈りが

まったく自然な流れのなかで歌い出されることによって

この詩に立ちのぼってくる悔いの深さは

グンと緊張感を帯びることになりますが

そのことばかりではないところに

この詩が人々を鷲づかみにしてしまうパワーがあります。

 

ありきたりの風景を

ありきたりにさせない詩の力は

ではいったいどこから来るものでしょうか。

 

そのようなことを考えながら

この詩を味わう姿勢になっているのは

何がさせるのでしょうか。

 

 

「知恵」「叡智」「智慧」などと訳される詩集を

橋本一明は「かしこさ」と訳し

つとめて平易な日本語にしようとしたことと

そのことは関係しているようです。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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