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2018年11月22日 (木)

中原中也・詩の宝島/ベルレーヌの足跡(あしあと)/補足2・橋本一明の読み・その4

 

 

橋本一明訳のベルレーヌを

もう一つ読みましょう。

 

中原中也もこの詩の翻訳を試みていますが

未完成に終わったものです。

 

 

たおやかな片手の……

               ひびきもたかいクラヴサンの

               ついてはなれぬにぎわしい楽の音

                          ペトリュス・ボレル

 

たおやかな片手のくちづけるピアノ

バラ色の灰色の日暮れのなかに そこはかとなくかがやいて

さとひとつ いとかろやかやな羽の音 それといっしょに

いと古い いと弱い いと愛らしい しらべが

《あのひと》のうつり香ながい寝間のうちを

つつましく おずおずとまで まわりさまよう

これは何 このにわかなゆりかごは何 しずかに

しずかに 私のあわれな存在をいたわって?

どうしてもらいたいの? 陽気なやさしい歌よ

小屋にむかってわずかに開いた窓のほうへ

ともすればきえてゆく さだめないルフランよ

どうしたかったのだ? うつくしい かぼそい ルフラン

 

(角川書店「世界の詩集8・ヴェルレーヌ詩集」より。)

 

 

この詩は

「言葉なき恋歌」のなかの

「忘れられた小唄」におさめられています。

 

有名な「巷に雨が降るように」という

ランボーの詩行をエピグラフにした詩の

次に配置されていますが

このあたりに連続する詩篇について橋本一明は

やや詳しい注釈を加えています。

 

 

《ちまたに雨のふるように……》ではじまる有名な詩篇は、ロンドンの作といわれる。傍題

に引かれたランボーの原詩はまだ発見されていない。

 

この詩をはさんだ前2篇、後1篇、計3篇の詩篇は、72年の作か、その後のその気持の持

続の上で作られたものと考えられる。その頃1か月半にわたってヴェルレーヌはマチルドに

去られ、彼女の心をとりもどそうと努めていた。だからこれらはその心から生まれたものと

言えそうだ。

 

これらの詩篇はランボーによって生まれたと考えらるのがふつうだが、それでもさしつかえ

ないだろう。少なくともヴェルレーヌはそう読まれてもよいと考えていたと思われる。

 

(同上。改行を加えました。編者。)

 

 

このように記したのは

詩集「言葉なき恋歌」自体への

橋本一明独自の読み(解釈)があったからでした。

 

「言葉なき恋歌」へ付した

橋本一明の注釈もあわせて読んでおきましょう。

 

 

この詩集はよくランボーの影響下に生まれたといわれる。しかし、この詩集の主題が直接

間接にランボーだと考えるのは、必ずしも当をえてはいない。『ベルギー風景』を除けば、

主題を提供したものは大部分の場合マチルドだったと思われる。

 

しかし、作詩の衝動が何だったかを探索してみても、詩を楽しむためのたしにはならない。

詩というものは、作者自身、できてしまったあとで、これは別物ではないかという驚きを感じ

たとき、はじめて完成するのだから。

 

しかも、細部に至るまで素材の多義性を残したままひとつの完成体を作るということこそ、

ヴェルレーヌがめざした詩法だった。だから、縹渺(ひょうびょう)とした、茫漠(ぼうばく)とし

た、曖昧(あいまい)でしかも透明度を失わないこれらの詩篇を、そのものとしてぼくらは楽

しめばいい。

 

(同上。)

 

 

これらの注に偶然に巡り合ったのですが

橋本一明の詩に対する態度が表明されていて

びっくりするほどです。

 

橋本一明が

学者である側面の陰に

詩人の一面をのぞかせているところにぶつかり

なんだか得をしたような気分になりました。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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