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2018年11月29日 (木)

中原中也・詩の宝島/ベルレーヌの足跡(あしあと)/補足2・橋本一明の読み・その6

 

 

橋本一明が訳した

ベルレーヌの詩「神さまが私に言った……」を読み進めましょう。

 

 

 

私を愛さなければならない! 私こそ普遍の《くちづけ》

私こそおまえの語るその瞼 私こそその唇だ

おお したしい病人よ おまえをゆさぶっているその熱は

それも私だ! さあ 私を愛さなければならない

 

そう 私の愛は 山羊のようなおまえのあわれな愛が

よじのぼりえないところまで まっすぐにたちのぼり

荒鷲が兎をさらってとぶように なつかしい空のせまって

水をそそぐ 百里香(ひゃくりこう)の茂みのほうへおまえをはこぼう

 

おお 明るい私の夜! おお 月光を浴びたおまえのひとみ!

おお たそがれのあわいに 光と水のあの臥床(ふしど)!

この無邪気さ そして この憩いの祭壇!

 

私を愛せ! この二語が私の至高の言葉だ なぜなら

おまえの全能の神ゆえに 私はのぞむことができるが

第一に私がのぞむのは おまえに私を愛させることが“できる”ことのみ

 

 

――主よ あんまりです! 真実私にはできません だれを愛すると? あなたを?

おお いけません! 私はふるえます おお あなたを愛することはできません

私はのぞまないのです! その価値がないのです あなた

愛の清らかな風に咲く巨大な《バラ》よ おお あなた

 

すべての聖者らの心よ おお

イスラエルのねたむものだったあなた

なかば開いた無邪気の花のうえのみに憩う貞潔な蜜蜂よ

なんと 私があなたを愛しえますと? 狂っているのですか?

 

父よ 子よ 精霊よ この罪びとが この卑劣なものが

このおごれるものが つとめのごとくに悪をなし

嗅覚も 触角も 味覚も 視覚も 聴覚も

 

すべての感覚のうち 全存在のうち――そして ああ!

その希望 その怨恨のうちにすら ただひとつ 古い

アダム一身の身をこがす愛撫の恍惚をのみいだく私が?

 

(角川書店「世界の詩集8・ヴェルレーヌ詩集」より。ルビは大半を省略し、傍点は“ ”で示しました。編者。)

 

 

奇数節にイエス、偶数節に私が

交互にあらわれる

ダイアローグの形に作られた詩です。

 

各節は

きっちりとした4-4-3-3行の

ソネットに作られています。

 

 

この罪びと

この卑劣なもの

このおごれるもの。

 

アダムがそうであったように

愛撫の恍惚のみに身をこがす私が

どうして主よ、あなたを愛することができましょうか

――という私(=詩人)が

どのようにして愛する人になっていくのか

少しづつこの詩の世界が

身近になっていきます。

 

 

橋本一明は

四の第2詩節《イスラエルのねたむ者》に注を加え

旧約の

《主はその名をねたむ者とよびてひとり愛せられんことを欲したまう天主なり》

――を参照するように記しています。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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