中原中也・詩の宝島/ベルレーヌの足跡(あしあと)/補足2・橋本一明の読み・その11
「神さまが言った……」を読み
「Crimen Amoris」を読んだのは
偶然だったのですが
ベルレーヌの詩の足どりは
この二つの詩を読み比べるだけでも
ベルレーヌの骨格の一部を知ることができるような
重要な要素があるような気がしてきました。
◇
「Crimen Amoris」は
ベルレーヌが1884年に刊行した詩集「昔とちかごろ」にあり
橋本一明はこの詩集から「ヴェルレーヌ詩集」のために
「万華鏡」、「詩法」とともに3作品を翻訳しています。
詩集題名の通り
過去と現在の作品を集めた詩集ですから
「Crimen Amoris」がいつ制作されたかわかりませんが
3作中でも末尾に置かれてあることから
刊行年に近い制作であると見ることが可能でしょうか。
橋本一明はこの年、1884年の年譜に
40歳。母からクーロームの土地を贈与される。醜聞にみちた浪費生活。
――とだけ記しています。
◇
橋本一明訳編の「ヴェルレーヌ詩集」は
全詩集ではなくアンソロジーですから
ベルレーヌの全詩篇が収録されているものではありません。
「Crimen Amoris」を
このアンソロジーの最終詩としたのには
ベルレーヌではなく
訳編者の橋本一明のなんらかの意図があるはずなのですが
それがどのようなものかは記されていません。
そう思いながら詩集の結末まで読んでみると
終り方がどことなくあっけないような気がしてきます。
それは何故でしょうか。
この理由と
橋本一明の死とは関係するのでしょうか。
◇
橋本一明が肺癌に斃れ急逝したのは1969年でした。
それからおよそ半世紀
生前の橋本一明を知る女性詩人により
「『二十歳のエチュード』の光と影のもとに」という書物が書かれました。
この「『二十歳のエチュード』の光と影のもとに」(2014年、洪水企画発行)にある年譜は
橋本一明の足跡を丹念に追っています。
その年譜の橋本一明死後の記述には
この年、渡辺一民との共編になる『シモーヌ・ヴェーユ著作集』全5巻が春秋社より刊行さ
れる。また講談社から『ヴェルレーヌ詩集』(執筆途中で倒れたため、その意をついで渡辺
一民、菅野昭正、滝田文彦、二宮敬ら友人が補い完成した)が刊行された。
――とあるのに遭遇し
講談社版の「ヴェルレーヌ詩集」というものがあることを知ります。
その内容はどんなものか
角川文庫の「ヴェルレーヌ詩集」は1966年発行ですから
それよりも深められたであろう研究(読み)の成果はどのようであるか
どのような違いがあるのか
最終詩を「Crimen Amoris」とする構成なのか、そうではないのかなどと
関心は深まるばかりですが
今それをひもとく材料がありません。
そのうち読んでみることにしたいと思います。
◇
途中ですが
今回はここまで。
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