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2018年12月27日 (木)

中原中也・詩の宝島/ベルレーヌの足跡(あしあと)/補足2・橋本一明の読み・その13

 

 

「Crimen Amoris」(愛の犯罪)は

エクバターヌという古代メディアの首都にある宮殿の

悪魔や堕天使たちの宴(うたげ)の様子を歌いはじめます。

 

それは七大罪を祭る宴――。

 

絹と黄金で飾り立てられ

異教の音楽が奏でられるなかで

悪魔や堕天使たちの祈る声が響き渡ります。

 

おお なんと美しい!

――と第2連にあるのは

地の声でしょうか。

 

ベルレーヌの心が

動いているのでしょうか。

 

欲望や食欲が解放されて

輝かしい光の満ちた宴は

御小姓(おこしょう)たちがすばしこく立ち回り

水晶グラスのバラ色の酒が

次々に注ぎ回されています。

 

 

ベルレーヌがカトリックに回心した後に書かれた詩です。

 

その心に映し出される異教徒の宴の陶酔――。

 

なにが起こるのだろうと

緊迫した気持ちになるのは自然です。

 

 

ランボーが現われるのは

第5連。

 

むんずと腕を組み 彼は夢みる

ひとみに炎をあふれさせ ひとみに涙をあふれさせ

――と歌われて登場します。

 

宴の中にある

堕天使のうちの

もっとも美しい若者として登場するのです。

 

彼のひたいに くるしみが

憂愁の黒い胡蝶をとまらせていた

おそるべき不滅の絶望!

 

おれをしずかにしておいてくれ!

――と言い残し

彼は宴を去ります。

 

ここらが

全25連の詩の3分の1ほど。

 

第10連で

彼の叫びのような祈りの声がはじまり

続く1連4行×4連が彼の言葉です。

 

彼の説くのは

地上をかくれ家とする地獄が

普遍の愛に身をささげるであろう世界です。

 

祈りが終わったとき

彼が手にしていた松明が落ち

大火がごうわうと燃えあがります

 

燃え盛る火に

黄金は熔け

大理石ははじけ

絹はぼろ屑となる……

 

堕天使(悪魔)たちの歌う美しいコーラスが

猛火の中から聞こえています。

 

 

第17連、

炎が天をなめるのを見つめながら

つぶやかれる彼の祈りの言葉は

湧きあがる歓声に吸われていきました

 

第18連、

そのとき雷鳴がとどろき

歓喜の歌声も途絶えます。

 

何ひとつ残ったものはなかった

 

すべては

一場の夢にすぎなかったのか

 

 

やがて――。

 

無数の星がきらめく

さ青の夜。

浄福の野が広がっています

 

冷たい流れ幾すじか

廃墟に残った石床を流れている

 

梟(ふくろう)たちが

空(くう)を横ぎり

ときどき流れからはねあがる波が

キラリと光る静寂

 

 

はるか彼方の丘々から

愛のような、なにか、形に定まらない形

やわらかなものの形があらわれ

雨水の流れから霧がたちのぼり

それは人の営みをおもわせる

 

最終連は意訳しないで

橋本一明の翻訳をそのまま読みましょう。

 

 

これらすべては 心のように 魂のように

また 言葉のように ういういしい愛にあふれて

崇め 陶然と身を開き もとめむかえる

ぼくらを悪よりまもりたまう 寛大仁慈なる神を

 

 

この詩の全文は

中原中也・詩の宝島/ベルレーヌの足跡(あしあと)/補足2・橋本一明の読み・その10

にあります。

 

ベルレーヌのランボーへ向ける眼差しが

冷酷ではないことが

橋本一明の翻訳に読み取れるでしょうか。

 

ベルレーヌがこの詩で

キリストの愛の勝利を歌ったにしても

ランボーを貶めているものでないことは

歴然としています。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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