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2018年12月 3日 (月)

中原中也・詩の宝島/ベルレーヌの足跡(あしあと)/補足2・橋本一明の読み・その8

 

 

橋本一明のベルレーヌ訳は

どれもこれもが平明でやさしく

その中にはげしくさえある日本語を選び

それを現代口語にしているところにあるでしょう。

 

おお あなたを愛することはできません

――と「四」の第2行でイエスに応じた下りは

 

おゝ、否、われ戦きてなす能わず。御身を愛する能わず。

――としたのは河上徹太郎の訳

 

おお、否よ! われわななき、われ敢えてなし得ず、おお、われ「御身」を敢えて愛し得ず、

――としたのは堀口大学の訳です。

 

橋本一明の翻訳には

文語の一つもなく

文語調さえありません。

 

 

 

たしかだ わが子よ それに値したいとのぞむなら

たしかにできる ほら ここにある 花咲いた百合にむかって

飛んで行く雀蜂のように 私の教会の開かれた腕にむかって

おまえの心の定まらぬ無知を進ませよ

 

私の耳にちかづき 勇敢に 率直に

辱めの言葉をそそぎこめ

倨傲のまたつくろいの一言もなく すべてを語り

えらばれた悔悟の花束を私にささげよ

 

そして虚心に素朴に私の食卓に寄れ

私はおいしい聖餐(せいさん)でおまえをことほぐだろう

そこには天使もただ侍(はべ)るだけだろう

 

おまえは不変の葡萄の葡萄酒を飲むだろう

その力 その甘さ その善さにより

おまえの血は不死の世界に芽ばえるだろう

 

 

さて、私がおまえの肉となり理性となる

この愛の秘蹟(ひせき)のうちに つつましい信仰をまもり

とりわけ ときしげく私の家にもどりきて

渇きをいやす《葡萄酒》にあずかり

 

それなくては人生も裏切りとなる《パン》にあずかり

わが父に祈り わが母にこいねがえ

追われてこの地上にある日 叫びもたてずに

羊毛をあたえる小羊であることがゆるされますよう

 

麻布(あさぬの)と無邪気さをまとう子供であることがゆるされますよう

おまえのあわれな自己愛と本質を忘れることがゆるされますよう

そしてさいごに わずかとも私に似ることがゆるされますよう

 

ヘロデやピラトやペトロのあの日々のあいだ

くるしんで極悪の死を死ぬために

おまえとおなじであった私に似ることがゆるされますよう!

 

 

えも言えぬよろこびであるほどに甘美な

これらの義務におまえの示した熱誠にむくいるために

私は地上でおまえに味わわせよう 私の初物(はつもの)

心の平和を 貧しくあることへの愛を そしてまた

 

精神がおだやかな希望にむかって開き

私の約束にしたがって聖杯をくむと信じているとき

敬虔(けいけん)な空に月のすべりゆくとき

バラ色のまたお黒いアンジェルスの鐘のなりわたるとき

 

私の光のなかへの昇天をまち

私の日ごろの慈愛へのかぎりないめざめをまち

永遠の私の賞讃の音楽をまち

 

不断の恍惚を 知恵をまち また かつて私が愛し

ついに私のものとなったおまえの苦悩の愛すべき光芒につつまれ

私のうちにあることをまち 神秘な夕暮れを味わわせよう!

 

(角川書店「世界の詩集8・ヴェルレーヌ詩集」より。ルビはほとんどを省略しました。編者。)

 

 

第7節は

第6節で私(=詩人)が投げかけた問いへの

イエス(=神)の答えです。

 

これをソネット3篇で構成したのには

ベルレーヌのどのような意図があったでしょうか。

 

ここには

愛の行いの実際が

イエスの言葉として語られています。

 

 

平明であるからといって

対象は神のことばなのですから

厳格であり優しいものであらねばなりませんが

そのこところを訳そうとしているのを

素人なりに感じることができるでしょうか。

 

こうして詩は

結末部へいたります。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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