中原中也/秋の詩名作コレクション19/さまざまな人
さまざまな人
抑制と、突発の間をいったりきたり、
彼は人にも自分にも甘えているのです。
※
彼の鼻は、どちらに向いているのか分らない、
真面目のようで、嘲(あざけ)ってるようで。
※
彼は幼時より変人とされました、
彼が馬鹿だと見られさえしたら天才でしたろうに。
※
打返した綿のようになごやかな男、
ミレーの絵をみて、涎(よだれ)を垂らしていました。
※
ソーダ硝子(ガラス)のような眼と唇とを持つ男、
彼が考える時、空をみました。
訪ねてゆくと、よくベンチに腰掛けていました。
落葉が来ると、
足を引込めました。
彼は発狂し、モットオを熱弁し、
死んでゆきました。
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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