中原中也/秋の詩名作コレクション30/(小川が青く光っているのは)
(小川が青く光っているのは)
小川が青く光っているのは
あれは、空の色を映しているからなんだそうだ。
山の彼方(かなた)に、雲はたたずまい、
山の端(は)は、あの永遠の目(ま)ばたきは、
却(かえっ)て一本(ひともと)の草花に語っていた。
一本の草花は、広い畑の中に、
咲いていた。――葡萄畑(ぶどうばたけ)の、
あの唇(くちびる)黒い老婆に眺めいらるるままに。
レールが青く光っているのは、
あれは、空の色を映して青いんだそうだ。
秋の日よ! 風よ!
僕は汽車に乗って、富士の裾野(すその)をとおっていた。
(一九三三・一〇)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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