中原中也/秋の詩名作コレクション11/無 題
無 題
緋(ひ)のいろに心はなごみ
蠣殻(かきがら)の疲れ休まる
金色の胸綬(コルセット)して
町を行く細き町行く
死の神の黒き涙腺(るいせん)
美しき芥(あくた)もみたり
自らを恕(ゆる)す心の
展(ひろが)りに女を据(す)えぬ
緋の色に心休まる
あきらめの閃(ひらめ)きをみる
静けさを罪と心得(こころえ)
きざむこと善(よ)しと心得
明らけき土の光に
浮揚する
蜻蛉となりぬ
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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