中原中也/秋の詩名作コレクション12/秋の愁嘆
秋の愁嘆
ああ、秋が来た
眼に琺瑯(ほうろう)の涙沁(し)む。
ああ、秋が来た
胸に舞踏の終らぬうちに
もうまた秋が、おじゃったおじゃった。
野辺を 野辺を 畑を 町を
人達を蹂躪(じゅうりん)に秋がおじゃった。
その着る着物は寒冷紗(かんれいしゃ)
両手の先には 軽く冷い銀の玉
薄い横皺(よこじわ)平らなお顔で
笑えば籾殻(もみがら)かしゃかしゃと、
へちまのようにかすかすの
悪魔の伯父(おじ)さん、おじゃったおじゃった。
(一九二五・一〇・七)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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