中原中也/秋の詩名作コレクション5/いちじくの葉
いちじくの葉
夏の午前よ、いちじくの葉よ、
葉は、乾いている、ねむげな色をして
風が吹くと揺れている、
よわい枝をもっている……
僕は睡(ねむ)ろうか……
電線は空を走る
その電線からのように遠く蝉(せみ)は鳴いている
葉は乾いている、
風が吹いてくると揺れている
葉は葉で揺れ、枝としても揺れている
僕は睡ろうか……
空はしずかに音く、
陽は雲の中に這入(はい)っている、
電線は打つづいている
蝉の声は遠くでしている
懐しきものみな去ると。
(一九三三・一〇・八)
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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