中原中也/秋の詩名作コレクション35/(秋が来た)
(秋が来た)
秋が来た。
また公園の竝木路(なみきみち)は、
すっかり落葉で蔽(おお)われて、
その上に、わびしい黄色い夕陽は落ちる。
それは泣きやめた女の顔、
ワットマンに描かれた淡彩、
裏ッ側は湿っているのに
表面はサラッと乾いて、
細かな砂粒をうっすらと附け
まるであえかな心でも持ってるもののように、
遥(はる)かの空に、瞳を送る。
僕はしゃがんで、石ころを拾ってみたり、
遐(とお)くをみたり、その石ころをちょっと放(ほ)ったり、
思い出したみたいにまた口笛を吹いたりもします。
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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