中原中也/秋の詩名作コレクション7/干物
干物
秋の日は、干物(ひもの)の匂(にお)いがするよ
外苑の舗道しろじろ、うちつづき、
千駄ヶ谷、森の梢のちろちろと
空を透かせて、われわれを
視守(みまも)る 如(ごと)し。
秋の日は、干物の匂いがするよ
干物の、匂いを嗅(か)いで、うとうとと
秋蝉(あきぜみ)の鳴く声聞いて、われ睡(ねむ)る
人の世の、もの事すべて患(わず)らわし
匂を嗅いで睡ります、ひとびとよ、
秋の日は、干物の匂いがするよ
(「新編中原中也全集」第2巻・詩Ⅱより。新かなに変えてあります。)
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